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ゴールデングローブ賞ノミネート結果に見る悲喜こもごも

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ゴールデングローブ賞ノミネート結果に見る悲喜こもごも

現地時間の12月14日、第68回ゴールデングローブ賞がノミネートが発表された。例年、ノミネートに関しては下馬評がほぼそのまま結果に反映されることが多い中、今年は予想外の展開が多く、ノミネートされるはずがされなかった人、されないと思っていたのにされた人、それぞれ悲喜こもごもだ。

まずは12月10日から全米公開されている『ツーリスト』(日本2011年3月11日公開)。ジョニー・デップとアンジェリーナ・ジョリーという、今をときめく二大スター主演というだけでも大いに話題となっていたが、批評家の評価が芳しくなかったこともあり、オープニング成績は予想を大きく下回る1647万ドルだった。そのためか、下馬評では全くノミネート候補に挙がっていなかったにもかかわらず、ハリウッド外国人記者クラブのメンバーにはかなり魅力的な作品だったようだ。作品賞、ジョニーが主演男優賞、そしてアンジーが主演女優賞にノミネートされたことは、多くの人々にとっても驚きだった。それについてアンジーは、「私はミュージカル・コメディー部門でノミネートされるのは慣れてないの。初めてだから驚いたわ」と発言。というのも『ツーリスト』はスリラー・ドラマなのだが、なぜかジャンルがコメディ部門になっているのがアンジーにも面白かったらしい。いずれにしても、今後の興行成績アップに一番大きく反映しそうなビックサプライズと言っても良さそうだ。

さらにジョニー・デップが『アリス・イン・ワンダーランド』(10)でも主演男優賞にノミネートされたことは、ノミネート発表者にとっても驚きだったらしい。

ほかには『ウォール・ストリート』(日本2011年2月4日公開)のマイケル・ダグラス。咽頭がんをおしての積極的なプロモーションと、がんを克服したダグラスに対する同情からノミネート予測があったようだが、実際にノミネートされたことについて記者クラブの会長は、「同情などではない。マイケルに敬意を表する気持ちもあるが、純粋に素晴らしい演技だった」と、彼の実力を称えている。また共演者のアン・ハサウェイは最有力候補に挙がっていたが、全く候補に挙がっていなかった『Love and Other Drugs』(日本公開未定)のジェイク・ギレンホール、突然ノミネートされた感のある『Easy A』(日本公開未定)のエマ・ストーンもサプライズだ。エマは「ベテランに混じって、どんな顔をして授賞式に出たら良いの? きっと震え上がっちゃうわ」とコメントしている。

一方で、ノミネート確実と言われていた俳優や作品が候補から漏れたこともかなりの衝撃になっている。

まずは『インセプション』(10)。『ダークナイト』(08)ではジョーカーを演じた故ヒース・レジャーに注目が集まってしまったため、今回はその反省を踏まえて作品賞、監督賞、脚本賞と、クリストファー・ノーラン監督に敬意を表するのは良いとして、主演のレオナルド・ディカプリオの演技もかなりのものだったにも関わらず、渡辺謙を含めてキャストのノミネートは皆無となってしまった。またレオは、マーティン・スコセッシ監督の『シャッター・アイランド』(10)の演技も高く評価されており、来年こそはオスカー像を手にするのではないかと期待されていたが、公開が2009年10月から2010年2月に伸びたことで、作品そのものも葬り去られてしまった感がある。

そして『ソーシャル・ネットワーク』(日本2011年1月15日公開)のジャスティン・ティンバーレイク。歌手を辞めてしまったのではないかと思われるほど、真摯に俳優業に取り組み続けた結果、同作でナップスターの創始者を演じたジャスティンの演技力はかなり高い評価を得ており、ソニー・ピクチャーズが、助演男優賞候補としてアンドリュー・ガーフィールドではなく、ジャスティンをイチオシする方針を固めたと噂されていたほどだ。もちろんダブルノミネートもありだったわけだが、結果的にはアンドリューにお株を奪われてしまった。

しかし何といっても一番衝撃の結果になったのは、コーエン兄弟の『トゥルー・グリッド』(2011年3月18日公開予定)。各賞でノミネートされていることや、アカデミー賞で作品賞など4部門を受賞した『ノーカントリー』(07)、同脚本賞を受賞した『ファーゴ』(96)のコーエン兄弟作とあって、有力候補の中に入っていた。当然、作品賞、監督賞、そしてマット・デイモン、ジョシュ・ブローリン、ジェフ・ブリッジスの誰かは必ずノミネートされると誰もが信じていた。しかし蓋を開けてみると、全滅という結果に終わっている。

昨今ではゴールデングローブ賞の中からアカデミー賞候補が絞られることが多かったが、今回、コーエン兄弟などアカデミー会員にはお気に入りの監督や作品が漏れたことやサプライズノミネートが多かったことで、アカデミー賞のノミネートそのものが例年になく先読みできない展開になっているようだ。【NY在住/JUNKO】

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