スネオヘアーがウツの坊さん役で俳優開眼!ロックな生き方とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
スネオヘアーがウツの坊さん役で俳優開眼!ロックな生き方とは?

インタビュー

スネオヘアーがウツの坊さん役で俳優開眼!ロックな生き方とは?

ミュージシャンのスネオヘアーが、芥川賞作家・玄侑宗久の小説の映画化作品『アブラクサスの祭』(12月25日公開)で、映画初主演を飾った。演じたのは、かつてロックミュージシャンだったウツの僧侶・浄念役。悩める僧侶役を彼がどう受け止め、どう演じたのか、インタビューをして聞いてみた。

映画初主演作ということで、プレッシャーはあったのだろうか。「めちゃめちゃありましたよ(苦笑)。まず、演技をするというスキルがなかったし、僕は色々出たとこ勝負で、わーっとしゃべるタイプだから、決まったセリフが言えなかったりするんです。演技するという以前の段階で、セリフが覚えられるのかなと。でも、音楽のシーンがあるのが救いで、劇中の曲をどうしようかってところからアプローチをしていきました」。

僧侶役だから、所作にも苦労したようだ。「座禅や正座が結構辛かったです。でも、法衣に着替える前に剃髪をしたんですが、そこですっと気が引き締まりました。お経のセリフは難しかったですが」。

ウツの薬を飲みながら、妻と子供と暮らし、禅僧として日々の勤めをしていく浄念。時には失敗もする彼を、寺の住職・玄宗夫妻や家族、周りの人々が支えていく。不器用な浄念を、スネオヘアーはどうとらえたのか。「浄念は、そういう生き方を選んでるというよりは、病気でそうなってしまう。でも、そこが人の気持ちを揺さぶるのかなと。何ごとにも慣れていくことが大人になるってことなんだろうけど、そこを排除した時、純粋さが残る。そういうふうに生きられたら格好良いし、それこそ“ロックな生き方”ですね。自分自身を曲げないというか、人によって生き方を変えないというスタンスは格好良いが、実際には難しいです」。

タイトルにある“アブラクサス”とは、善も悪もひっくるめた神の名前で、それは本作のテーマにもなっている。スネオヘアーのこの言葉に対する解釈はこうだ。「善も悪も受け入れる、悪いことを排除するとか、問題を改善しようとするのではなく、全てを受け入れていくのってすごいことですよ。光があれば影も必ずあるってことでしょうね。答えが出ないし、出せない。無から始まるっていうか」。

特に、劇中の「ないがまま」というセリフが感慨深い。「頑張ろうっていう背中の押し方じゃなくて、だめなところも受け入れ、そこから一歩踏み出す。あのセリフはそういうふうにエールを送ってるのかなって」。

本作に出演して、彼自身もその価値観から影響を受けたようだ。「日々、細かいことで悩んだりすることってあるけど、そこから全てを受け止めていくという発想に立つと、やっぱりできないなと感じたりはします。でも、そこで“禅”の考えを思ったりすること自体、これまでにはなかったことですから」。

最後に、本作で一番アピールしたい点を聞いてみた。「本当に答えの出ない映画で、テーマを共有するのは難しいかもしれない。でも、正面からぶち当たっていくことしかできない浄念の生き方や、彼を支える人たちとのつながりなどは、自分たちの日常と何かしらリンクすると思います。だから何かをノックしたり、とっかかりを持つことへのきっかけになってもらえれば良いですね」。

真っ直ぐにしか生きられない浄念の姿は、とても人間臭くて、胸の奥にある琴線を心地良く刺激する。煩悩だらけの人生だが、それも悪くない。本作はある意味、ユニークな人間賛歌なのだ。スネオヘアーの俳優開眼作となった『アブラクサスの祭』は12月25日(土)公開なので、今年一年の締めくくりに見てみてはいかがだろうか。また、来年にはライブツアーも決定しているのでお楽しみに。【MovieWalker/山崎伸子】

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