「50年かけて、長い長い映画を撮った」山田洋次監督が「男はつらいよ」公開50周年に思いを馳せる|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「50年かけて、長い長い映画を撮った」山田洋次監督が「男はつらいよ」公開50周年に思いを馳せる

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「50年かけて、長い長い映画を撮った」山田洋次監督が「男はつらいよ」公開50周年に思いを馳せる

シリーズ50作目「男はつらいよ お帰り 寅さん』は12月27日(金)から公開される
シリーズ50作目「男はつらいよ お帰り 寅さん』は12月27日(金)から公開される

22年ぶりのシリーズ最新作『男はつらいよ お帰り 寅さん』(12月27日公開)が、10月28日(木)より開催される第32回東京国際映画祭のオープニング作品として上映されるなど、いまなお国民的映画として愛され続けている「男はつらいよ」。その第1作公開からちょうど50年を迎えた8月27日、新宿ピカデリーにて「祝!50周年 寅さんファン感謝祭」が開催され、山田洋次監督と倍賞千恵子、佐藤蛾次郎がトークショーに登壇した。

この日は記念すべきシリーズ第1作『男はつらいよ』(69)の4Kデジタル修復版を、“応援上映”ならぬ“ワイワイガヤガヤ上映”として、声援や拍手OKの中で上映。山田監督は「今日みたいに皆さんが笑ってにぎやかに観ているのを見ると、ホッとするし懐かしい気持ちになります」とうれしそうな表情を浮かべ、「あのころは日本人全体がもっと騒々しく、活気にあふれていた。だんだん日本人はおとなしくなってきて、寅さんみたいなデタラメでいい加減な男が気楽に生きていけないような世の中になった気がします」とコメント。

そして50年前の今日、公開初日の思い出を訊かれると「新宿松竹という大きな映画館があって、そこに観に行ったと思います。スタッフ試写の時には誰も笑わなかったから、ちっとも可笑しくない真面目な映画を作ってしまったと思って、失敗だと落ち込んでいました」と公開までの心境を振り返ると「でもプロデューサーから客が入ってるぞと言われて新宿に来て、劇場のドアを開けたらみんなが笑ってる。俺の映画は可笑しい映画なんだと観客に教えられました。この日のことを一生覚えてなきゃいけないと思った日が、50年前の今日でしたね」と明かした。

「祝!50周年 寅さんファン感謝祭」のトークショーに山田洋次監督らが登壇!
「祝!50周年 寅さんファン感謝祭」のトークショーに山田洋次監督らが登壇!

そして、いよいよ年末に公開される最新作について「出来上がってみたら、こんな映画になったのかと僕自身も不思議な気持ちになりました」と告白する山田監督。「最初はいまの倍賞さんを映してから50年前の倍賞さんを映すとビックリするだろうと思ったら、意外に驚かない。この人にはこういう人生が、さくらにはさくらの人生があったんだなというように、俳優の皆さんたちのドキュメンタリーを撮っているような不思議な感覚があった」と明かす。

「その中で渥美さんだけが、歳を取らない。まるで幻影のように振る舞っている。改めて渥美清という人の、独特の魅力を感じました。不思議な映画ができあがった」と続ける山田監督に、倍賞は「渥美さんがそのままで、周りの私たちだけが年取っている。渥美さんがよく、長い1本の映画を撮ってるのかと言っていましたが、いまの出来上がった映画がそれなのかなって思いました」と語る。そして山田監督は「50年かけて、長い長い映画を僕たちは撮った。これは映画史上初めてだし、今後も2度と作られることはないんじゃないかな」としみじみ。「50年もかけて映画作る人なんていませんよ」と笑いを誘った。

その後、来場した観客からの質問に答え、渥美清との思い出など当時のエピソードを楽しそうに語っていった3人。「撮影されている時点で50年つづく予感はありましたか?」という質問に山田監督は「そんなものはまったくなかったです」と笑いながら「1作目がヒットしたので『続』を作って、またヒットして作っての繰り返し。『望郷篇』の時に『僕が撮っておしまいにしましょう』と意気込んで作ったら、その意気込みが映画に出たのか爆発的にヒットしてしまって(笑)。そんなこんなでなかなかやめられなくなったけど、50年も続くなんて夢にも思っていなかったです」とうれしそうに「男はつらいよ」と歩んできた半世紀に思いを馳せていた。

取材・文/久保田 和馬

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