【今週の☆☆☆】“嫌われ総理”のドタバタ劇『記憶にございません!』や女性戦場ジャーナリストの真実を描く『プライベート・ウォー』など週末観るならこの3本!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
【今週の☆☆☆】“嫌われ総理”のドタバタ劇『記憶にございません!』や女性戦場ジャーナリストの真実を描く『プライベート・ウォー』など週末観るならこの3本!

コラム

【今週の☆☆☆】“嫌われ総理”のドタバタ劇『記憶にございません!』や女性戦場ジャーナリストの真実を描く『プライベート・ウォー』など週末観るならこの3本!

Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、9月13日から今週末の公開作品をピックアップ。三谷幸喜監督が描く政界が舞台のコメディに、片目を失っても戦場の現状を伝え続けた女性ジャーナリストの伝記映画、製作から25年を経て劇場公開される伝説の大長編など、バラエティあふれる作品ばかり!

週末に観てほしい映像作品3本を、MovieWalkerに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MovieWalkerに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

三谷幸喜が現代政治をぶった斬る!?『記憶にございません!』(9月13日公開)

記憶喪失になった総理大臣はピンチを乗り切れるのか?(『記憶にございません!』)
記憶喪失になった総理大臣はピンチを乗り切れるのか?(『記憶にございません!』)[c]2019フジテレビ 東宝

落ち武者の幽霊が登場する『ステキな金縛り』(10)、監督作では初となる本格時代劇『清須会議』(13)、初のSF映画『ギャラクシー街道』(15)といった近年の3作品は設定が特殊すぎたり、描写が大胆すぎて若干空振りの感が否めなかったが、『ザ・マジックアワー』(08)のころにアイデアが閃いたという本作は違った!

様々なポジションの個性的な人物が絡み合う本作は、三谷監督の代表作『THE 有頂天ホテル』(06)の笑いと興奮を彷彿させる現代が舞台のシチュエ―ションコメディ。しかも政界が舞台で、中井貴一が演じる支持率最低で態度も発言も最悪な総理大臣が記憶喪失になってしまうという設定を使って、現実の世界をシニカルに笑い飛ばしているのが何とも三谷らしくて痛快!

これまでの作品同様、主演の中井貴一はもちろん、共演陣の佐藤浩市、小池栄子、ディーン・フジオカ、草刈正雄などの絶妙な芝居にも目を見張るが、中でも野党第二党党首に扮した吉田羊、アメリカ初の日系女性大統領役の木村佳乃、ギターが上手い衆議院議員を演じたROLLY、夜のニュースキャスターになりきった有働由美子の、ほかでは見られない快演は見逃せない(特にROLLYと有働はエンドロールを見るまで誰が演じているのかわからなかった)。

最後の最後までまったく飽きさせない、最高濃度の超絶・三谷ワールドだ!!(映画ライター・イソガイマサト)

実在した眼帯の女性戦場ジャーナリスト“メリー・コルヴィン”の素顔『プライベート・ウォー』(9月13日公開)

ロザムンド・パイクが主演を務め、製作にはシャーリーズ・セロンも参加する『プライベート・ウォー』
ロザムンド・パイクが主演を務め、製作にはシャーリーズ・セロンも参加する『プライベート・ウォー』[c]2018 APW Film, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

恥ずかしながら、この映画を観るまでメリー・コルヴィンという人のことをまったく知らなかった。世界の戦場を取材し、片目を失った眼帯のジャーナリスト。シリア内戦の過酷な現実を生中継で告発して、その直後に爆撃で亡くなった女性だ。

そんな伝説的ジャーナリストの伝記映画に主演するのはロザムンド・パイク。『ゴーン・ガール』(14)を例に取るまでもなく、演技にかける情熱と実力において、当代きっての名優の一人である。

パイクが演じるコルヴィンは、正直矛盾と欠点だらけだ。しかし彼女はどれだけ自分の心身が傷ついても、戦争で傷つき死んでいく一般市民の姿を追い続け、その度にショックを受けずにはいられない。この映画が、善と悪や、歴史に残すべき偉業を描いているのかどうかはわからない。だがメリー・コルヴィンの伝えようという行為と情熱には畏敬と感謝の念を抱くし、コルヴィンを知らない人にこそ観てほしい作品だと思う。(映画ライター・村山章)

“本編7時間18分”で“全編約150カット”…驚異的な長回しでつづる『サタンタンゴ』(9月13日公開)

ハンガリーの田舎町に暮らす貧しい村人たちの日常風景を息遣いまで丹念につづる(『サタンタンゴ』)
ハンガリーの田舎町に暮らす貧しい村人たちの日常風景を息遣いまで丹念につづる(『サタンタンゴ』)

私たち映画ファンは何となく習慣で「映画の長さは2時間前後」と思い込んでいるが、商業的な都合をのぞけば映画の長さに決まり事などない。ハンガリーのタル・ベーラ監督はそんな制約などまったく存在しないかのように、7時間18分という空前絶後の大長編を撮り上げた。

1994年製作で、これが日本初公開となる本作は、「悪魔のタンゴ」という題名からして不吉だが、実際の本編も不穏な予兆がみなぎっている。どうしようもなく憂鬱な雨や闇に覆われ、なおかつ詩的で美しくもある農村の風景。そこであてどなく虚ろに生きる村人たちを待ち受ける運命とは?

ストーリーをあれこれ解釈する必要はない。永遠に続くかのような長回しショットが連ねられるモノクロの小宇宙に身を委ね、シュールで、深遠で、スリリングな異次元の映画体験に浸るべし!(映画ライター・高橋諭治)



週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!

構成/トライワークス

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