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“ゴッホ”俳優ウィレム・デフォーに聞く『永遠の門』の秘話!「すばらしい師に恵まれた」

インタビュー

“ゴッホ”俳優ウィレム・デフォーに聞く『永遠の門』の秘話!「すばらしい師に恵まれた」

「“アーティストvs世界”という構図だと言えるよね」(デフォー)

――『最後の誘惑』(88)ではキリストを演じていたデフォーさんが本作で、マッツ・ミケルセンさんが演じる聖職者に「僕は未来の人々のために、神に選ばれた」と語る場面が印象的でした。どのような想いでこのシーンを入れ、また演じたのでしょうか?

監督「あのシーンでゴッホは、聖職者が話している時の顔、彼の反応をとにかくじっと見つめている。そして最後にやっと、自分が考えていることを話す。その演出には理由があって、ゴッホが最後に答えることによって、彼の言葉がすごく強調されるようにしたんだ。始めのうち、聖職者はゴッホが狂っているという認識の上で話をしていたんだけど、ゴッホが『イエスが世に見出されたのは死後30年か40年のこと。生前は話題にものぼらなかった』と発言することで、一気に立場が逆転するんだ。聖職者というのは、十字架にかかったキリストのために生涯を懸けている人で、そんな彼の座っている土台をひっくり返すようなことを言ったわけだから」

ゴッホという画家、そして絵を描くことに迫った『永遠の門 ゴッホの見た未来』(公開中)
ゴッホという画家、そして絵を描くことに迫った『永遠の門 ゴッホの見た未来』(公開中)[c] Walk Home Productions LLC 2018

デフォー「脚本はとても興味深いもので、あのシーンはゴッホの実際の書簡の中にあったものと、僕たちが生み出した言葉で出来ている。ゴッホって、すごく誠意のある人間だったと思うんだ。いろんなことを自分なりに探求していて、誠実な人柄で、皮肉なところが一切ない。だから、あのセリフを言う時は、変にひねったりせず、僕自身が感じていることをまっすぐに投げかけるつもりで演じたよ」

監督「そのリアリティは、観客の皆さんも感じてくれると思う。あのシーンのポイントは、ゴッホが自分をキリストと同一視したということ。それを言葉で説明するのではなく、シーンとして見せたんだ」

デフォー「あと、ゴッホがアーティストであり、夢見る者であるのに対し、聖職者は秩序ある社会の一員、他の人の邪魔にならないようにどう機能したらいいかを考えている一員として描かれている」

監督「聖職者の安全というのは、そこが基礎になっているからね。僕が画家として、かつて最初に描いたプレート・ペインティング(割れた陶器を貼りつけ、そこにイメージを描くという新しい表現法による作品)のタイトルは『患者と医者たち』と言うんだけど、それはフランスの詩人にして演劇家のアントナン・アルトーの晩年の評論『ヴァン・ゴッホ 社会が自殺させた者』にインスパイアを受けて描いたものなんだ」

デフォー「だから、あのシーンは“アーティストvs世界”という構図だと言えるよね」

どこまでも続く風景に「永遠が見えるのは僕だけなんだろうか」と自身に問いかけるゴッホ
どこまでも続く風景に「永遠が見えるのは僕だけなんだろうか」と自身に問いかけるゴッホ[c] Walk Home Productions LLC 2018

「きっとゴッホは日本に来ていたんだと思うよ」(シュナーベル)

――ゴッホのファンが多い日本の観客に向けて、メッセージをいただけますか?

監督「ぜひ、この映画を観に行ってください!(笑)。映画の中で、ゴーギャンがゴッホに『マダカスカルに行こう』と言った時、ゴッホはすかさず『日本はどうだい?』と聞く。ゴッホはいつだって日本に憧れ、日本に行きたいと願っていたんだ。でも日本は遠すぎたから、その代わりにゴッホが“フランスの日本”にあたると言っていた南フランスのアルルに落ち着く。でも、きっと彼は日本に来ていたんだと思うよ。彼の想像力の中でね(笑)」

「ウィレムには卓越した演技力があり、人生経験も豊富」とはシュナーベル
「ウィレムには卓越した演技力があり、人生経験も豊富」とはシュナーベル

取材・文/石塚圭子

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