MCUや『スター・ウォーズ』も!?『ジョジョ・ラビット』監督、タイカ・ワイティティから目が離せない!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
MCUや『スター・ウォーズ』も!?『ジョジョ・ラビット』監督、タイカ・ワイティティから目が離せない!

コラム

MCUや『スター・ウォーズ』も!?『ジョジョ・ラビット』監督、タイカ・ワイティティから目が離せない!

第44回トロント国際映画祭の観客賞を受賞し、日本時間の2月10日(月)に受賞式が行われる第92回アカデミー賞では作品賞や助演女優賞(スカーレット・ヨハンソン)ほか6部門にノミネートされている『ジョジョ・ラビット』(公開中)。観客、そして批評家からも熱い支持を集める本作を手掛けたのが、これからの映画界を担う鬼才タイカ・ワイティティだ。彼の活躍を振り返りながら本作の魅力を紹介したい。

大作や話題作を次々と手掛けるタイカ・ワイティティ監督
大作や話題作を次々と手掛けるタイカ・ワイティティ監督[c]2019 Twentieth Century Fox

1975年生まれ、ニュージーランド出身のワイティティ。演劇学校で学ぶなど俳優としての活動も経て、短編「Two Cars, One Night」(04)で米アカデミー賞の短編映画賞にノミネートされ、監督として注目を集め始める。その後、ヴァンパイアたちの日常をドキュメンタリー風に描いたホラーコメディ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(14)などでさらなる人気も獲得。そして、その名を世界中に知らしめたのがマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の人気シリーズ『マイティ・ソー バトルロイヤル』(17)だ。ワイティティによるキレのあるギャグとスピード感あふれるバトルシーンが絶賛され、興収は8億5000万ドル超えの大ヒットを記録した。

【写真を見る】ジョジョとアドルフが手榴弾を手に森の中を爆走!
【写真を見る】ジョジョとアドルフが手榴弾を手に森の中を爆走![c]2019 Twentieth Century Fox

そんなワイティティが新たに手掛けたのがこの『ジョジョ・ラビット』。第二次世界大戦期のドイツを舞台にした本作は、ヒトラーに憧れる10歳の少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)の目を通して、戦争の愚かさや悲惨さを皮肉めいたブラックユーモアを用いながら描いていく。シリアスになりがちな本作のテーマだがそこはワイティティ監督、思わずクスッとさせられる登場人物のやり取りなどを交え、ポップでコミカルな作品としても仕上げている。

ジョジョとアドルフの息の合ったコンビ(?)プレーも魅力
ジョジョとアドルフの息の合ったコンビ(?)プレーも魅力[c]2019 Twentieth Century Fox

主人公ジョジョは立派な兵士になるのが目標だが、自分で靴ひもを結ぶことができず、参加した青少年集団ヒトラーユーゲントの合宿ではウサギを殺すように命令されても、それができず“ジョジョ・ラビット”というあだ名をつけられてしまう気弱で心優しい少年。そして、周囲から臆病者とバカにされ落ち込む彼を励ますのが、ワイティティ自らが演じる“空想上の友だち”アドルフだ。なにかの問題に直面するたび、ジョジョがアドルフと相談して対処しようとする様子はどこかおかしく、戦争映画であることを忘れてしまう。

ジョジョの母ロージーをスカーレット・ヨハンソン、ナチス将校のクレンツェンドルフ大尉をサム・ロックウェルが演じる
ジョジョの母ロージーをスカーレット・ヨハンソン、ナチス将校のクレンツェンドルフ大尉をサム・ロックウェルが演じる[c]2019 Twentieth Century Fox

ほかにも印象的な登場人物が次々と登場する。ジョジョを大きな愛で包み込む母ロージー(スカーレット・ヨハンソン)は、戦時下でもおしゃれやダンスを楽しみ、人間らしくあり続けて生きることを諭し、ナチス将校のクレンツェンドルフ大尉(サム・ロックウェル)は、ヒトラーユーゲントで子どもたちに兵士としての訓練を施す一方で、どこかドイツの敗戦を悟ったような言動をこぼすことも。そして最も印象的なのが、ロージーが家に匿っているユダヤ人の少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)だ。

ナチスの教えをまっすぐに受け止めているジョジョは、偶然エルサに遭遇し、慌てて家から追いだそうとするも失敗。そこで今度は、彼女をリサーチしてユダヤ人に関する本を書くことを思いつく。エルサが話す荒唐無稽なユダヤ人の情報に夢中になって耳を傾け、時には恐怖で怯えてしまうジョジョ。かしこく勇敢なエルサにジョジョが振り回されてしまう様子はかわいく、温かい気持ちにもさせてくれる。

ジョジョは自宅で母が匿ったユダヤ人の少女エルサと出会う
ジョジョは自宅で母が匿ったユダヤ人の少女エルサと出会う[c]2019 Twentieth Century Fox

マオリ族の父とロシア系ユダヤ人の母を持つなど、自身もある程度の偏見を経験したと語るワイティティは、本作について「大人たちの憎悪を吹き込まれたドイツ人少年の目を通した物語に魅了されました。本作のユーモアが、新しい世代の絆になってほしいと願います」とコメントしている。大人が子どもに偏った思想を植えつける戦争の悲惨さを描く本作だが、ジョジョがエルサとの交流を通して、その価値観が大きく揺らいでいく過程もエモーショナルに綴られているのだ。

少年ジョジョと彼の空想上の友だち、アドルフとのやり取りが楽しい『ジョジョ・ラビット』
少年ジョジョと彼の空想上の友だち、アドルフとのやり取りが楽しい『ジョジョ・ラビット』[c]2019 Twentieth Century Fox

MCUの最新作『マイティ・ソー/ラブ&サンダー(原題)』(公開未定)の監督を務めるほか、『スカイウォーカーの夜明け』(19)で完結したばかりの「スター・ウォーズ」新シリーズにも携わっていると噂されるワイティティ。今後もさらなる活躍が期待される彼が、不寛容が蔓延する現代社会への痛烈なメッセージとして、ユーモアと皮肉と温かさで作り上げた『ジョジョ・ラビット』。その思いをぜひスクリーンで受け止めてほしい。

文/トライワークス

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