田中慎弥の芥川賞受賞作品「共喰い」が青山真治監督×菅田将暉主演で映画化|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
田中慎弥の芥川賞受賞作品「共喰い」が青山真治監督×菅田将暉主演で映画化

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田中慎弥の芥川賞受賞作品「共喰い」が青山真治監督×菅田将暉主演で映画化

『東京公園』(11)で第64回ロカルノ国際映画祭金豹賞(グランプリ)と審査員特別賞を受賞した青山真治監督が、菅田将暉主演で田中慎弥の芥川賞受賞作品「共喰い」を映画化することがわかった。

芥川賞受賞会見でも話題となった、文壇に衝撃を与えた「共喰い」の田中は、今もなお故郷・山口県下関にこだわり創作を続けている。また、下関と関門海峡を挟んで対岸に位置する福岡県北九州市門司出身の青山監督も北九州を舞台にした『Helpless』(96)、『EUREKA(ユリイカ)』(01)、『サッドヴァケイション』(07)の北九州サーガ3部作を完成させ、本作も北九州での撮影を敢行。ふたりの共通点といえる土着的な世界観の中での人間の葛藤を細かにとらえ、リアルな姿を浮き彫りにするという作家的特性が見事に合致し、日本映画界に新たなる痕跡を残すことを予感させる。

自身の作品が映画化されるのは今回が初めてとなる田中は、「決して万人受けするストーリーではないと思いますが、そのように限定された世界が映画によってどのように広がっていくのか、原作者として、読者として、観客として、楽しみにしています。小説の『共喰い』こそが一番だと私は思っています。映画に携わる人たちは、『共喰い』は映画のための物語じゃないか、と考えていることでしょう。勝負です」と期待を寄せる。

メガホンを取る青山監督は、「脚本家の荒井さんにどうだろう、とメールを戴き、一読の感想はズバリ、これを他人に撮られたくない、でした。文章から立ち上る土地の匂い、人間関係、何もかも勝手知ったる世界のような。原作が田中氏にしか書けない小説だったように、本作も自分にしか作れない映画になってほしい。こんなことを願うのは久しぶりです」と作品への思いを明かす。

主人公の遠馬を演じる菅田は、「原作を読んだ時、文字から生活風景や街並み、人間の欲や業にあふれたくすんだ世界が頭の中に飛び込んできて、純粋に映像化が楽しみでした。オーディションで青山監督にお会いし、『この作品に出たい、この監督とお仕事させていただきたい』という思いがより強くなりました。だから今回選んでいただいたことに心から幸せを感じています」と喜びを語り、「今までの菅田将暉を知ってくださってる方には想像もつかない、イメージをがらっと変える作品になると予感していますが、こういった濃厚で生々しい世界観を持つ作品への挑戦が役者として、男として深さをもたらしてくれる転機だと信じ、命を懸けて遠馬を演じたいと思います」と自信をみなぎらせる。ヒロイン千種には新鋭・木下美咲が抜擢され、父親の愛人役に、山下敦弘監督の映画やポツドールの舞台などで幅広く活躍する篠原友希子を起用。乱暴な父親役に、日本映画界に欠かすことのできない名バイプレ―ヤ―の光石研、実母役に圧倒的な存在感を持つ実力派女優の田中裕子を迎える。

昭和63年、父とその愛人・琴子と川辺の町に暮らしている高校2年生の遠馬は、川を隔てて、魚屋を営む産みの母親・仁子の元に時々出かけては、川で釣った魚をさばいてもらっていた。日常的に父の乱暴な性交場面を目の当たりにしていた遠馬は、嫌悪感を募らせながらも、自分にも父の血が流れていることに恐れを感じていた。同じ学校の千種と、覚えたばかりの性交にのめりこんでいくが、ある日、父と同じ暴力なセックスをしてしまい喧嘩をしてしまう。一方、台風が近づき、町が水に飲まれる中、琴子は父との子を身ごもったまま逃げるように家を出ていく。怒った父は、琴子を探し回るが、途中通りがかった神社で仲直りをしようと遠馬を待つ千種を見つけるのだった。

『共喰い』は9月にクランクイン、2013年夏公開を予定している。【Movie Walker】

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