平岡祐太、奇跡の実話を描く『人生、いろどり』で感じた“継続の力と重み”|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
平岡祐太、奇跡の実話を描く『人生、いろどり』で感じた“継続の力と重み”

インタビュー

平岡祐太、奇跡の実話を描く『人生、いろどり』で感じた“継続の力と重み”

徳島県上勝町で、料理の“つまもの”と呼ばれる葉っぱビジネスを立ち上げ、成功させた実話を基に描く『人生、いろどり』(9月15日公開)。キャストに吉行和子、富司純子、中尾ミエといったベテラン勢を迎え、生き甲斐を見出していく女性たちの姿を生き生きと活写。人生の深みと豊かさを、優しく語りかける。そこで、ベテラン勢が顔をそろえるなか、事業立ち上げに奮闘する青年役に扮し、爽やかな魅力を光らせる平岡祐太にインタビュー!

70・80代の女性たちを主戦力に始まったビジネスは、今や年商2億円を稼ぎ出すビッグビジネスに成長した。実際に上勝町に赴いた印象はどうだったのだろう?「高齢化が進んだ町ですが、とにかく、おばあちゃんたちが元気で!良い表情をしているんです。エキストラとして参加してくださっているのが、本当にその経験をされてきている方々。『こんなことあったねえ』と話しながら撮影しているので、それは説得力がありますよね(笑)。町の方々と一緒に作った映画という気がすごくしています」。

町の人々と触れ合ってみて、印象的だった言葉があるという。「『自分で働いたお金で、孫に何かを買ってあげられるのが嬉しい』って。やっぱり、自分のできることや必要とされる場所を見つけることは、人が輝くうえで大事なんだなと思いました」。そう語るように、作中でも老いと孤独を意識していた女性たちが、様々な困難を乗り越え、居場所を見つけていく姿は、まるで少女のように輝いている。

平岡が演じるのは、農協職員の江田役。ビジネスの発案者である横石知二氏をモデルにしている。「実際、横石さんにお会いして、役作りのヒントにしました。横石さんのおばあちゃんたちを見守る顔は、にこにこと本当に温かくて。でも、一面ではビジネスマンとしての顔も持っている。時代に合わせて、どの葉っぱが良いかを常に試行錯誤しているんです。映画の中の江田は、作品全体のストーリーテラーだけれど、主役はおばあちゃんたち。おばあちゃんたちの背中をポンと押す、きっかけ作りをする人だと思っています」。

女性たちが自らを変えていくように、江田自身も“良い男”に成長していく。「僕は、“良い男”って戦う顔をしている男だと思うんです。たとえば、007のジェームズ・ボンドとか(笑)。江田に関して言えば、“仕事”という戦いの土俵に立ったということになるんじゃないでしょうか。最初は文句の多かった江田ですが、おばあちゃんたちとやるべきことを見つけていくんですね。でも僕は、文句って悪いことだとは思わないんです。文句があるということは、現状に満足していないということ。反発作用は、成長ののりしろだと思っています」。

日本を代表する役者陣との共演も大いに刺激になったようだ。「ずっと継続していくことってすごいなと。スクリーンに映る重み、奥行きが全然違いますから!吉行さん演じる薫のビニールハウスが燃えてしまうシーンでは、吉行さんが悲しみを搾り出すような表現をされていて、心の奥底まで傷ついているのが伝わってくる。すごかったなあ。藤竜也さんの照雄役も、魅力があって面白い!うなぎの養殖に失敗して、『うなぎ!生きろ!』って叫ぶシーンがあるんですが、あのセリフ、アドリブなんですよ。とにかく藤さんは、男として格好良い。そして、かけてくれる一言、一言が優しいんです」。

継続の重みを実感したというが、彼自身、まもなく役者10年目に突入する。「今の心境としては、またデビュー当時に戻ったような気がしているんです。『また、一からやっていこう!』って。それは、これまでに色々なことに手を出して、トライしてみて感じたこと。最終的に、やっぱり役者をやっていきたいという思いに立ち戻りました。役者は求められないと続けられない仕事。求められるためには、日々、知識や感覚を蓄積していくことが大事。たとえば、時代劇をやるなら殺陣の知識が必要だし、知識が備わっていないまま演じれば、見る人が見たら、わかってしまうもの。細かな積み重ねが、スクリーンに奥行きとして映るんだと思います」。

自身にとって“人生をいろどるもの”とは何だろう?「やっぱり、仕事が充実している時が一番、自分の周りが彩っている気がしますね。僕は、細かな積み重ねを面倒と思う人は信用できないと思っていて。本作の御法川監督は本当にピュアで、一点集中型。映画にかける愛情がものすごいんです。そういう方々とお仕事ができると、良い作品になるし、充実しているなと感じます」。

“積み重ねの力”を信じ、役者としての気持ちを新たにした平岡祐太。どのように年齢を重ねていきたいか尋ねると、「酸いも甘いも噛み分ける、そんな大人になっていきたいですね」と笑顔を見せた。一歩、一歩、踏みしめて進もうとする彼の姿勢は、誠実そのものだ。是非、スクリーンを彩る彼の情熱に触れてみてほしい。【取材・文/成田おり枝】

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