新海誠監督『言の葉の庭』で新境地!声優・入野自由&花澤香菜の魅力とは|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
新海誠監督『言の葉の庭』で新境地!声優・入野自由&花澤香菜の魅力とは

インタビュー

新海誠監督『言の葉の庭』で新境地!声優・入野自由&花澤香菜の魅力とは

国内外にファンを持つアニメーション監督の新海誠が『秒速5センチメートル』(07)で描いたのは、舞い散る桜、しんしんと降る雪など、美しい風景描写と共に、思いを寄せ合いながらも離れていく男女の姿だった。最新作『言の葉の庭』(5月31日公開)で紡がれるのは、15歳の少年と27歳の女性との間に生まれた恋の物語だ。全編を雨が彩り、その情景が見事に2人の心の距離を表現する。46分という短い時間のなかに、驚きとときめきが詰まった感動作に仕上がった。そこで新海監督を直撃!

靴職人を目指す高校生タカオは、ある雨の日に公園で一人、缶ビールを飲む謎めいた女性ユキノと出会う。2人は約束もないまま、雨の日だけの逢瀬を重ねていき、次第に心の距離を近付けていくのだ。物語の着想のきっかけを聞くと、「雨宿りの話にしたかったんです」と口火を切った監督。「前作の『星を追う子ども』(11)が長編でしたので、今度はコンパクトな作品を作りたいと思っていて。限られた尺のなかで描くなら、シンプルな構造を持つ作品の方がふさわしいと考えたんです。そこで、お互いのことを知らない男女が偶然出会い、雨宿りをするところから広がっていく話にしようと思いました」。

主人公の2人に年の差を設定したのはなぜだろう。「年の差というのは、現実社会だとそのまま社会的ポジションの差に当たるわけです。15歳の少年であれば当然学生だし、27歳の女性であれば、彼女なりのポジションがある。人と人との交わりというのは、『この人が好きだ』という感情の部分もあるけれど、完全に社会的地位から逃れることもできないものですよね。現実は、そういうことの絡み合いです。ですから、年齢差があることで、ピュアなもの、そして社会的に縛られたものを同時に描けるのではないかと。僕たちの社会のなかでの、リアルな人間関係が描けたと思っています」。

地雨、夕立、天気雨、豪雨など、ふたりの心の動きを、雨のアニメーションに置き換えて表現。その美しさは目を見張るばかりだ。なかでも、明るい雨の降る中、タカオがユキノの足に触れるシーンには、思わずドキッとさせられる。「貴重で美しいことが、2人の間に行われているということを見せるように、天気雨にしているんです。それは、まるで天からの祝福が降ってきているように。このシーンはいわば、告白シーンであり、名前も知らない男女の、体的な交わりに近いシーンだと思うんです。濡れ場でもあり、尊い感情の交わりでもあるというか(笑)。清潔さとエロティシズムが同居する、大事なシーンになりました」。

タカオとユキノに命を吹き込んだのは、人気声優の入野自由と花澤香菜だ。ふたりの印象を聞いてみた。「入野さんは、『星を追う子ども』でご一緒して、すっかり僕がファンになってしまって(笑)。彼ならば、年齢感もぴったりだし、求めているもの以上のものを出してくれると確信がありました。彼の役者としての本質は、僕が思うに、物語を深い部分まで掘り下げて解釈する、知性にあるように感じるんです。声を発する前の段階の能力の高さというのは、入野さんの大きな武器ではないでしょうか」。

一方の花澤に関しては、「当初、全く念頭になかったんです」という。「ユキノの声のイメージが、自分自身でもなかなかつかめなくて。難しい役だろうなと思っていたんです。27歳の役柄なので、25歳以上の方ということで、オーディションテープを集めてもらって。そのなかに、当時、23歳の花澤さんのテープがあったんです。『どうしてだろう』と聞いたら、ご本人が『新海監督の作品をやってみたい』と仰ったそうで、テープを送ってくれたんですね。聞いてみると、上手いんですが、すごく揺れ幅があったんです。幼くて可愛らしい声を出す瞬間もあれば、大人のクールな距離感を感じる時もあって」。

続けて、「子役をやってらしたからなのか、彼女がその頃ちょうど、大人と子供の部分がミックスしていた時期なのかはわかりませんが、とにかくその幅が気になって。ユキノのキャラクターに必要な子供っぽさと、老成した感じ、それを演じるのにふさわしいと思うようになりました。傲慢な言い方かもしれませんが、花澤さんの新しい魅力が出ている作品になったのではないかと思います」と胸を張る。

人と人との間にある距離を描き続けている新海監督。今回も、距離がキーとなっている。「これまでも、『秒速5センチメートル』では物質的な距離を、『星を追う子ども』であれば、生きる者と死者を描いていますが、つまりはギャップを描いているんですよね。今回であれば、それは年齢差に当たるわけで。ギャップや欠落感があると、それを埋めようとする、あらゆる力が働くわけです。ギャップや欠落は、物語を動かす大きなエンジンになると思います」。

タカオとユキノの間に降っていた雨は、2人の距離が近付くにつれて次第に小雨になり、クライマックスでは激しい雨と共に互いの感情をさらけ出す。声優陣の熱演も圧巻!雨とシンクロした濃密な46分を、是非スクリーンで体感してほしい。【取材・文/成田おり枝】

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