いまだから言える、『終戦のエンペラー』日米キャストとの舞台裏|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
いまだから言える、『終戦のエンペラー』日米キャストとの舞台裏

インタビュー

いまだから言える、『終戦のエンペラー』日米キャストとの舞台裏

日米豪華キャスト共演のハリウッド映画『終戦のエンペラー』(7月27日公開)を引っ下げて来日したピーター・ウェーバー監督を直撃。彼は、マシュー・フォックス、トミー・リー・ジョーンズという2大ハリウッドスターと、西田敏行らそうそうたる日本人キャストをどう束ね上げたのか?いまだからこそ言える、豪華キャストとの撮影秘話をインタビューで語ってもらった。

『終戦のエンペラー』は、太平洋戦争直後の日本を舞台にした歴史サスペンス映画だ。GHQのボナー・フェラーズ准将(マシュー・フォックス)が、マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)から、戦争の真の責任者を追求するという特命を受け、水面下で捜査をしていく。脚本段階から関わったウェーバー監督は「事実だけではなく、歴史的精神に忠実な内容であること。そして、人を惹きつけて離さないエンタテインメントであること。アメリカだけではなく、日本の観点からも見ても、バランスの取れた物語であること。その3点を大切にしたよ」と語る。

物語のメインストリームは社会派サスペンスだが、それにフェラーズと、初音映莉子扮するかつての恋人アヤとのロマンスが絡み合っていく。「ロマンスとのバランスの取り方が難しかったけど、完成したものには満足している。男ばかりの話に、アヤという要素が入ったことはとても効果的だったよ」。

初音映莉子のエピソードについて尋ねると、監督の表情はとても柔和な表情を見せた。「彼女はすごくナチュラルな人だ。マシューとトミーは、撮影前に細かいところまで打ち合わせをするのが好きなんだが、映莉子はそうじゃなかった。だから始まる前は正直、わかっているのかどうか、心配だったよ(苦笑)。でも、現場に行くと、彼女は突然、アヤになり切った。彼女には事前に話さなくて良いってことが、その時初めてわかったんだ」。

トミー・リー・ジョーンズについて監督は「演技の独特のリズムがあった」と分析。「自分が言ったあとにすぐ相手のセリフが入ってほしい。だから、弾みをつけて、セリフを言うんだ。まあ、彼は何年もやっているベテランの役者だから、すべて経験がものを言っていると思った。彼は監督でもあるし、脚本も書ける偉い人だからね」。

そんなトミーに演出をするのは大変だったか?と監督に突っ込んで見ると「やっぱりナーバスにはなったよ。だって言ってみれば、彼は映画界のエンペラーだから」と苦笑い。「もし、僕が若すぎたら、怖くて立ち向かえなかったかもしれない。彼は気難しいと聞いていたけど、確かにそういう面はあったから。もちろん、僕は監督として、自分の考えはきちんと伝えたよ。それは、自分にとってとてもチャレンジングなことだったし、すごく良い経験をさせてもらったと今では思っている」。

また、トミーと共に、クライマックスの名シーンを紡ぎ上げた昭和天皇役の片岡孝太郎について尋ねると、「彼は歌舞伎のマスターだ。歌舞伎俳優は、演技についてのアプローチの仕方が違っていたね。彼は天皇の歩き方から入って、最後にメンタリティにたどりついていったんだ。監督としてはそういうやり方は初めてだったから、目からウロコだったよ」と感心していた。

ちなみに監督は、撮影後、上京して片岡の歌舞伎の舞台を見たそうだ。「その時、僕は楽屋に招待され、かつらをつけるところから見せてもらったよ」とうれしそうに、ケータイに入った写真を探して見せてくれた。マッカーサーと天皇が対面するシーンについて「あのシーンにはとても満足している。緊迫感あふれるシーンだけど、とても情感が詰まった名シーンとなった。いわば、ふたりともエンペラーだから、ぶつかることもなく、すんなりと会った感じだ。お互いに敬意と謙遜の念を持っていたので、とても良いシーンになったよ」と手応えをかみしめていた。

最後に監督は、これから見る日本の観客に向けてメッセージをくれた。「戦後の焼け野原のセットを見て、震災後の日本の写真を思い出した。そこには瓦礫しかなかった。日本人はお腹を空かせ、傷ついていたが、そこから立ち直っていったんだ。日本は絶対に立ち直れる。逆境から成功に導けるんだ。ここで描かれているのは、現代の日本のルーツの物語だ。日本のみなさんが、本作を見て、どんなことを思ってくれるのか、すごく気になるよ」。

ウェーバー監督が言うとおり、『終戦のエンペラー』は民主主義国家・日本としての初めの一歩を描いた人間ドラマでもある。本作にちりばめられたエピソードは、一つ一つが実に感慨深い。来る7月27日、日本の観客が本作を見て、どんなことを感じるのか、とても気になる。【取材・文/山崎伸子】

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