『終戦のエンペラー』のプロデューサーと中村雅俊が語る夏八木勲のカッコ良さ|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『終戦のエンペラー』のプロデューサーと中村雅俊が語る夏八木勲のカッコ良さ

インタビュー

『終戦のエンペラー』のプロデューサーと中村雅俊が語る夏八木勲のカッコ良さ

終戦直後の日本をアメリカ人からの視点で描いた歴史サスペンス大作『終戦のエンペラー』(7月27日公開)のプロデューサー、奈良橋陽子と、近衛文麿役の中村雅俊にインタビュー。興味深いキャスティング秘話から、撮影の裏話、故・夏八木勲のエピソードまで、ふたりが語ってくれた。

主演は、海外ドラマ「LOST」のマシュー・フォックス。彼が演じるボナー・フェラーズ准将は、マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)から、太平洋戦争の責任者追究の極秘命令を受ける。調査が難航するなか、日本の運命を決定づける世紀の会見が開かれる。中村は本作の脚本について「いわゆる歴史映画だけど、司馬遼太郎さんの小説のように、同じ歴史上の人物の物語でも、誰の目線でやるかによって、こんなにも味わい深いものになるのかと、驚きました」と感心する。

中村が演じたのは、開戦直前に首相を辞任した近衛文麿役だ。「僕たち役者は、まず多少ビジュアルを似せようと考えるわけです。それで写真を見て、雰囲気なども作っていったら、細川元総理に似ていると言われて。細川さんって近衛文麿の孫なんですよ。だから、結果的には似せることができたかなと(笑)。また、近衛文麿は、多少強気の意見を言う人物なので、気持ちとしては日本国を背負っている、ということを意識して演じました」。奈良橋は、中村の近衛文麿について「すごく格好良くて、現地のクルーも絶賛していました。みんなが雅俊さんのファンになっちゃって」と笑顔を見せた。

奈良橋プロデューサーは、『ラスト サムライ』(03)、『SAYURI』(05)、『バベル』(06)のキャスティングディレクターを務めたことでも知られている。「あまり知られていない人物が、日本の歴史を変えるくらいすごいことをしていた。アメリカ人は絶対知らないエピソードだし、日本人にもほとんど知られていないと思ったので、そこに光を当ててみたかったんです」。

史実とフィクションが巧みに絡み合う本作だが、奈良橋にとっては特別な思いがあった。なぜなら彼女の祖父は、昭和天皇の補佐をしていた関屋貞三郎だからだ。劇中では、故・夏八木勲が扮した役どころである。「夏八木さんが役作りのために、私のおじに会ってくださり、いろいろと話を聞いてくれたんです。彼は、映画に出演できてとてもうれしいとおっしゃってくださいました。だから、彼が演じているのを見て、涙が浮かんでしまって。夏八木さんとは、オフの時にみんなで食事もしたし、その時の写真も残っています」。

中村も夏八木について「すごく格好良い方で、役者として人生を終えられた。素晴らしいですね」と言葉をかみしめる。奈良橋も「あの役は彼以外には考えられなかったんです。でも、他の方のキャスティングもそうで、私はたとえ断られても受け入れないんです」とキッパリ。「『ダメです』と言われても『ダメじゃない。是非やってほしい』と、とことん粘ります。昭和天皇役の片岡孝太郎さんも、スケジュールの都合がつかないと言われましたが、(中村)勘三郎さんの一言で出演してくださることになりました」。中村も「それも運命だなあと」とうなり、マッカーサー元帥が昭和天皇に謁見するシーンについて「日本国民として、涙が出ました」と称える。

最後に、ふたりから、これから見る観客へのメッセージをもらった。中村は「悲劇を描くのではなく、ここから日本が今日の姿になるという最初のステップを描いた映画です」と言うと、奈良橋も「まさにそう。あの当時、こんなに頑張って立ち上がったということを描きたかった」とうなずく。さらに、彼女は今の若者たちにこうエールを贈る。「9.11の時も若い人たちがすごく頑張っていました。だから、あまり引っ込み思案にならないで、世界へ堂々と出ていって、いろいろと表現していってほしい」。

知られざる終戦後の日本を描いた『終戦のエンペラー』は、今を生きる私たちに勇気と希望を与えてくれる懐の深い作品となった。【取材・文/山崎伸子】

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