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メディアに倍返し(?)のトム・ハンクス、久々の主演作『キャプテン・フィリップス』で3度目のオスカーなるか

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メディアに倍返し(?)のトム・ハンクス、久々の主演作『キャプテン・フィリップス』で3度目のオスカーなるか

現地時間9月27日から10月13日まで開催されている第51回ニューヨーク映画祭が、オープニング作品『キャプテン・フィリップス』(全米10月11日、日本11月29日公開)で幕を開け、ポール・グリーングラス監督、トム・ハンクス、バーカッド・アブディが記者会見に応じた。

同作は、2009年にソマリア沖で実際に起きた、マークス・アラバマ号乗っ取り事件でソマリア海賊の人質になったリチャード・フィリップス船長を描いた、実話に基づく小説の映画化だ。

製作陣には、オスカー受賞プロデューサーのスコット・ルーディンやオスカー俳優のケヴィン・スぺイシーなど最強のスタッフ、そしてアメリカ同時多発テロ事件でハイジャックされたユナイテッド93便の機内の様子を実にリアルに描いた『ユナイテッド93』(06)やマット・デイモン主演作「ジェイソン・ボーン」シリーズなどで、真実を鋭くえぐり出し、リアリティ溢れるスリリングなアクション映画を作らせたら右に出る者はいないと評判の、グリーングラス監督が揃った。

主演は、トム・ハンクス。昨今では舞台やプロデューサーなどに忙しかったトムが、久々にスクリーンでその実力を見せつけてくれた。『フィラデルフィア』(93)と『フォレスト・ガンプ 一期一会』(94)で2度にわたってアカデミー賞主演男優賞を受賞しオスカーの常連だったにもかかわらず、『キャスト・アウェイ』(00)以来はノミネートすらされていないトムだが、同作で、ノミネートが確実視されるとともに、早くも3度目のオスカー受賞の噂が囁かれている。

久々の主演作とあってメディアの関心はトムに集まりがちだったが、この壮大な海上のドラマを選んだ理由について聞かれたトムは、「それは、監督への質問でしょ」と最初からバシリと記者たちを一喝! 監督が小さな声で話し始め、満席の会場の後ろから「聞こえないのでもっと大きな声でお願いします」という声が聞こえると、「君がマイクを使ったらどうだい」と、早速ジョークで会場を沸かせた。

ソマリア人の海賊のリーダー、ムーセ(バーカッド・アブディ)と人質となったフィリップス船長の間に芽生えた、慈悲の気持ちにも似た関係に惹かれたというグリーングラス監督は、「常に新しいチャレンジをしたいと思っている。これは、海賊、ソマリアの問題にとどまらない、グローバルな問題でもある。この作品では、実際のテレビニュースでオンエアされた、フィリップス船長のヒーロー的な明るい側面ではなく、できるだけ実話に基づいて、その裏に隠された迫真のドラマをリアリティ溢れるものにしたかった」という。

約60日間を海の上で撮影した当時の様子について、「一部のキャストは実際の海軍特殊部隊に所属するメンバーで俳優ではないし、海という予測不能の自然の中での撮影では、あちこちに点在するクルーが見えなくなったりと、普通の撮影ではない大変さがあった。でも、ベテランのトムが、炎天下の中で1日中撮影しても、文句ひとつ言わずに何テイクでも撮り直しに応じるプロ根性には改めて感激したよ。人間がショックを受けて究極の状態に陥った時に、どんなふうになるかというのは一応脚本には書かれていたけれど、俳優がそれを身体全体で表現をしないといけない。それを見事にやってのけたんだから、彼は本当に素晴らしい俳優だよ」とトムを称えた。

フィリップス船長は、2010年には再び船長として現場に復帰しているそうだが、トムは「実在の人物を演じるということは、とても大きな責任がある。たくさんの本やビデオで彼についていろいろ学んだけど、実際に、彼に何回か会ってもらったんだ。彼のタフさには感激したし、会ってみると、実に気楽な感じの人なんだ。でもひとたび船に乗れば、常に緊張が付きまとう、と言っていたことも彼の人となりを知る上でとても役に立った。でも僕は、答えが分かっている質問を何度も繰り返して聞く君たちみたいなジャーナリストが、(怖いに決まっているのに)『あの時、怖かった?』とか『どんな風に感じた?』とか聞くみたいに、彼にその時の感情を聞いたりをしたりはしなかったよ」と笑いながら、チクリと嫌味を投げかける場面も。普通なら嫌われそうなものだが、さすがは国民的スターのトムとあって、そこでも大いに会場の笑いを誘った。【取材・文/NY在住JUNKO】

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