堀北真希、松田龍平、余貴美子が母について語る「一人しかいない、特別な存在」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
堀北真希、松田龍平、余貴美子が母について語る「一人しかいない、特別な存在」

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堀北真希、松田龍平、余貴美子が母について語る「一人しかいない、特別な存在」

『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(12)『さんかく』(10)などのオリジナル作品を中心に、今最も注目を集める映像作家のひとりとなった吉田恵輔監督。最新作『麦子さんと』(12月21日公開)は、豪華キャストを迎えて描く親子の物語だ。堀北真希、松田龍平、余貴美子を直撃し、母というかけがえのない存在について語り合ってもらった。

堀北と松田が兄妹を演じる本作。自分たちを捨てた母親(余貴美子)が突然に舞い戻ってくることから、ストーリーは動き出す。母に対して素直になれず、冷たく突っぱねてしまう兄妹。主人公の麦子に扮した堀北は、「お母さんとのやり取りや、喧嘩をするところなど、きっと誰にでも思い当たるところがあるんじゃないかなと思ったんです」と、脚本を読んだ印象を吐露。「見ている方に共感してもらったり、親近感を持ってもらえたら良いなと思って演じました」と役作りを振り返る。

余は「この家族はね、娘は協調性がないし、何をやっているかわからない。息子は頼りがいがないし、お調子者だし。親は親で、パートをして派手な格好で帰ってくる。よそから見たら、イケてない家族なんです」と笑う。堀北と松田は、ベテラン女優・余の演技から受け取ったものも多い様子だ。堀北は「脚本を読んだ時には、どんなお母さんなんだろうって不安だったんです。でも現場で、余さんが演じられるお母さんを見て、『これがお母さんなんだ』ってすごく納得ができた」。松田も「余さんが演じる母親は、可愛かったですね。僕の演じる憲男と母親が喧嘩をして、その声だけが聞こえてくるシーンがあるんです。脚本にはセリフが書かれていなくて、僕と余さんのアドリブだったんですが、母親の面倒くさい感じがすごく伝わってきて。母親だなと思いましたね」と笑顔を見せた。

堀北は麦子を「将来に対しても悩んでいて、あっちを向いたり、こっちを向いたり。なかなか前に進めないところがある」、松田は憲男を「ダメなお兄ちゃんなんですよね。麦子に対して、常に上からものを言うんだけど、逆に麦子に攻撃されると、ものすごく弱い。打たれ弱いんでしょうね」と分析。さらに堀北は「私はお兄ちゃんがいないので、現場で『お兄ちゃんってこんな感じなのかな』って思ったりしていました」と、松田の方をチラリ。

麦子と憲男の掛け合いが、なんとも絶妙なバランスで思わず笑いを誘うが、余は「(吉田)監督は、2人から生まれる、色々なことを分かっていてキャスティングしたんだと思いますね!堀北さんと松田さんは予測不能な2人で、お芝居のなかでも、『これは間なのかな?』と思っていると、『おおっ!いった!』っていう感じで」と言うと、堀北と松田も照れ笑い。堀北は「2人ともマイペースなので、(吉田)監督が絶妙な掛け合いに見えるようにしてくれたんだと思います」と、吉田監督に感謝しきりだ。

劇中では、麦子は母・彩子とぎくしゃくしたまま、「あなたのこと、母親と思ってないから」という残酷な一言をを投げつけたのを最後に、彩子は帰らぬ人となってしまう。堀北も「戸惑いましたね」と思いを馳せるが、状況は違えど、恋しく思っているはずの母親に素直になれないというのは、誰しもが思い当たる節があるかもしれない。余は、こう語る。「やっぱり誰しも、母親がいますからね。肉親であるからこそ、残酷なことが言えたり、いちいち腹を立ててしまったり。どうして、素直になれないんでしょうか。私もこの映画を通して、すごく自分の母親のことを考えるきっかけになりました」。

松田は「この映画は、子供の成長の話だと思ったんです」と言う。「母親って、やっぱり特別な存在じゃないですか。なんでも言えるし、甘えられる存在。でも、母親とか家族とか関係なく、“人同士”として話ができるようになったり、相手のことを想像できたりするようになって初めて、人は大人になるんじゃないかと思うんです。麦子と僕の演じた憲男では、その気付き方もまた違ってくる。憲男は、母親がいなくなって初めて、失ったものに気付く。麦子は、母親と一緒にいる時間がなかった分、その空白を自分で埋めることで、大人になっていく」。

親子の関係を振り返ってみたくなる本作。自身の母親に対しても、何か新しい気持ちが生まれただろうか?堀北は「私はお母さんとすごく仲が良くて。遊びに行ったりとかも、ほとんどお母さんと行くんです」と口火を切り、「お母さんが『外から帰ってきたら、うがいしなさい』とか『気をつけて行きなさい』とか、毎日、毎日言うことを、『なんで毎日言うの?』って思っていたけれど、最近、それは本当に心配をしてくれているからなんだって思うんです」と、改めてありがたみを噛みしめた。

松田は「自分の母親というよりかは、この映画がそういうきっかけになれると良いなと思いますね。母親を一人の女性として見ることって、なかなか意識しないとできないじゃないですか?そうやって意識することで、相手もまた違う顔をみせるんじゃないかな」。余も最後に、こう打ち明けくれた。「そうね。私も、母が母親になる前のこととか、ほとんど知らないなと思って。『この人がいなければ、私はいないんだ』ということも、毎日考えるわけじゃないですから。母の日だけじゃなくて、自分にとって一人しかいない母親のことを考える。この映画を見て、そんな一日にしてもらえると嬉しいです」。【取材・文/成田おり枝】

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