清水崇監督、無謀と承知で『魔女の宅急便』にトライ!「なぜ、監督が俺?」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
清水崇監督、無謀と承知で『魔女の宅急便』にトライ!「なぜ、監督が俺?」

インタビュー

清水崇監督、無謀と承知で『魔女の宅急便』にトライ!「なぜ、監督が俺?」

話題沸騰の実写映画『魔女の宅急便』(3月1日公開)の監督に清水崇の名前が挙がった時、きっと映画ファンやアニメファンの誰もが新鮮な驚きを感じたのではないか。清水監督といえば、ホラー映画。『呪怨』シリーズはオリジナル版だけではなく、ハリウッドリメイク版も監督して大成功を収め、その手腕はお墨付きだ。一見、児童文学の実写映画と清水監督は結びつかない気がするが、ホラー映画を常に娯楽性の高い作品に仕上げてきたセンスとサービス精神は侮れない。重責のメガホンをとった清水監督にインタビューし、本作の撮影秘話を聞いた。

オファーが来た時は、清水監督自身も驚いたそうだ。「ええ!?なぜ、俺なんですか?と、聞きました(苦笑)。『魔女の宅急便』は、誰であろうと実写にすること自体、無謀なチャレンジですよね。原作ファンはもちろん、アニメのイメージが世界的に強いから。プロデューサーの梅川(治男)さんは、オムニバス映画『非女子図鑑』(09)で僕がやったオープニングとエンディングがファンタジックだったので、声をかけてくださったみたいです」。

実際に、ファンタジーを監督してみて、とても楽しめたと言う清水監督。「僕のなかでは、ファンタジーもホラーもあまり変わらなくて、同じところにある感じがします。ファンタジーで、どこか一部、テイストを濃くするとホラーになる。そういう意味ではそんなに違和感がないし、ホラーを監督している時と感覚的には同じでした。ただ、おっさんが10代の女の子を主軸に描くってところの方が、僕にとっては新しいチャレンジでした」。なるほど、言われてみれば、そうかもしれない。

「男の理想の少女なんて、現実にはいないんです。ただの“いい子ちゃん”にしたくなかったので、生き生きしていても、落ち込んでいても、キキの自然体なところを捉えたいと思いました。だから、理想で固めて作ったわけではないです」。

500人を超えるオーディションのなかから大抜擢されたキキ役の小芝風花については「直前まで違う子がイチオシだったりしましたが、その後、ひっくり返りました。最終的には、彼女じゃないと、撮りたくないってところまでいったんです」と、いきさつを語る。「お芝居では、たまに飛び抜けて上手い子やセンスある子がいるんですが、そういう点で長けていたり、美人だったりするよりも、屈託がなくて、いやらしくない感じの子の方が良いなと思ったんです。ちゃんと、自分の嫌な面も出せる可能性がある子ですね」。

小芝が、長年フィギュアスケートをやっていたという経歴も功を奏したそうだ。「彼女は、フィギュアスケートを、お母さんと二人三脚でずっとやってきて、小さい頃から友達と遊ぶ時間があまりなかったみたいで、15歳にしてはお母さんとべったりで、どこか素直なところがあった。もちろん、フィギュアでライバル視されたり、意地悪をされたりした経験もあったと思うから、そのバランス感覚も良かったです」。

小芝の無邪気さもキキにぴったりだった。「水に濡れたり、高いところにいることも好きな子なので、最初はきゃっきゃ言いながら喜んでいました。僕もそうなんですが、ジェットコースター好きなんです。ただ、はしゃぎすぎていたので、『そんなにはしゃいでたら午後が持たないぞ』と注意したんですが、案の定、午後になったらぐったりしてきて(苦笑)。そういう幼稚なところも含めて、あの子がキキで良かったと思いました」。

小芝の演出については、自由を与えつつも、清水監督独自の追い込み方をしていった。「本人もどうして良いのかわからなくなることがけっこうありました。そんな時、『どうすれば良いですか?』と聞かれると、『自分で考えてみろ。俺も女の子の気持ちなんてわかんないから。お前がキキなんだから、自分で考えて動いてみろ』と答えるんです。すると彼女は、若干パニックになりながらも『わかりました。それで良いんですね?』と開き直りながらやると、やっぱり良いシーンになる。そういう瞬間が出てくるまでやるってことが何度もありました。まあ、あまり弱音を吐く子じゃなかったし、フィギュアとか、いろいろなことで鍛え上げられてきたのも大きかったでしょうね」。

本作で、まさに新境地を開拓した清水監督は、実写版をこうアピールする。「角野栄子さんの原作ファンはまだしも、やはり『魔女の宅急便』はアニメで知った人が多い。どうしてもそのイメージが強いから、実写版は先入観というか、色眼鏡で見られるとは思います。でも、今回、実写ならではの新しい世界ができたと思うので、興味本位で結構ですし、食わず嫌いにならず、劇場へ足を運んでもらえたらうれしいです」。

清水監督が、これまで培ったスキルを駆使して、果敢に挑戦した映画『魔女の宅急便』。本作は、小芝風花扮する表情豊かなキキの百面相や、縦横無尽な飛行シーン、ワクワクするようなカントリー調のセットなど、実写映画ならではの醍醐味が詰まった作品となったので、乞うご期待!【取材・文/山崎伸子】

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