宮藤官九郎、脚本でこだわるのは最初の一発目!その理由とは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
宮藤官九郎、脚本でこだわるのは最初の一発目!その理由とは?

インタビュー

宮藤官九郎、脚本でこだわるのは最初の一発目!その理由とは?

第24回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で、「ニューウェーブアワード」のクリエイター部門を受賞し、夕張でトロフィーを受け取った宮藤官九郎。2013年は、監督作『中学生円山』(13)や、脚本家として参加した『謝罪の王様』(13)などの話題作を放ち、初めてNHK朝の連続テレビ小説で脚本を手掛けた「あまちゃん」は国民的人気ドラマとなった。そして現在も、宮藤の脚本による『土竜の唄 潜入捜査官 REIJI』(公開中)が大ヒット上映中だ。宮藤官九郎にインタビューし、次から次へとパンチの効いた作品を生み出す舞台裏について話を聞いた。

映画祭では夕張市民から熱烈な歓迎を受けた宮藤。「ゆうばり映画祭は、前から興味がありました。僕の好きな映画が、ゆうばりで話題になってから全国へ広まったりしていて、ちゃんと映画ファンが見て選んでくれているんだろうなと思っていたので。今回は、賞の内容はあまり詳しく知らず、いただいた後に“ニューウェーブ”だと知って。僕の作品もちゃんと注目して見てくれたんだなと思って、素直にうれしかったです」。

ご存知、「あまちゃん」は社会現象になるほどの大旋風を巻き起こしたが、「あまちゃん」以降、クリエイターとして変化はあったのだろうか?「僕は『あまちゃん』と並行して、『中学生円山』などの映画も何本かやっていたので、ごっちゃになっているんです。だから、その前とか後とかを、なかなか考えられなくて。終わってすぐに、舞台を2つ作りましたし。ただ、『あまちゃん』をやったおかげで、それにくっついてきたすべてのことは、自分にとってご褒美だと思っています。ゆうばりの賞も含め、東スポ映画大賞や、みうらじゅん賞などをもらって、なんだか良い1年だったなあと」。

クリエイターとして、多方面からひっぱりだこの宮藤だが、日々、いろんな作品を同時進行させていく作業は苦痛ではないのか?「1つ書いたら人に読んでもらい、こっちが終わったら次はこっちの直しをやる、という感じでやっています。みなさんからよく『切り替えが難しいんじゃないですか?』と聞かれますが、逆に1つのことをずっと考えている方が、ちょっとおかしくなってくる。客観的じゃなくなってくるので、時々手を離す方がやりやすかったりするんです」。

脚本を書くスピードについては「若い時の方が遅かったかもしれない」とのこと。「それはきっと、自分に自信がなかったからだと思います。こんなこと書いたらつまらないヤツだと思われるんじゃないかとか、余計な自意識があって、けっこう悩んだりしていました。でも、20代後半くらいにそれらがなくなり、速くなったのかもしれない。やっぱり脚本は勢いで書いている時が一番楽しいですし、後から見返しても、そういう時の方が良いものを作っている気がします」。

自身の脚本については「ほめていただくのはすごくうれしいんですが、上がった作品を見て、セリフが面白いと言ってもらえるのは、半分くらい役者さんのおかげなんです」と謙遜する。「脚本が上手くいってない時、役者さんになんとかしてもらう時もありますし。いろんな人の目や意見が入り、クオリティという意味では上がっていくと思います」。

ただ、それでも宮藤が第一稿にこだわるのには理由がある。「稿を重ねると、だんだん角が取れてくる。だから、第一稿には力が入ります。一番最初に書いたものは、たとえ映像にならなくても、書き上げた時の手応えみたいなものが大事だと思うので。僕が、オリジナル作品にこだわるのは、そこなのかもしれない。原作がある時は、編集の作業になってくるから。でも、オリジナルは、どうなるかわからない。まだ、この世にないものを1個作るという時の勢い。それが一番、難しいけど、やっていて一番楽しいです」。

多忙を極める宮藤だが、長期間休みたいといった願望などはないのだろうか?「意外とないですね。数日休みたいとは思いますが。起きて、することがないと、映画を見に行ったり、マッサージに行ったりはしますが、ごはんを食べていると、もう不安になっちゃう。ああ、何にもしてないなって。何かをしてない俺に何の魅力があるんだろうってところがちょっとあります。仕事がないという不安ではないんですが、何かをしてないと、何か足りないなと思ってしまうんです」。

気になる、今後の監督作についても聞いた。「今、新しいものを撮りたいと思っていますが、準備中というか、まだ打ち合わせとかをやっている段階です。今度は、ゆうばりで新作をやってもらえるようになると良いなあと思います」。2014年の宮藤官九郎は、一体どんなニューウェーブを起こしてくれるのか?彼には毎回、パワフルな作品を期待しないではいられない!【取材・文/山崎伸子】

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