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C・イーストウッド最新作のエンドロールは異例の無音

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C・イーストウッド最新作のエンドロールは異例の無音

『アバター』(09)を超えて2015年最高のオープニング成績を記録し、クリント・イーストウッド監督作品で最大ヒットを記録している『アメリカン・スナイパー』(2月21日公開)。本作は、米軍史上最強と謳われた伝説のスナイパー、クリス・カイルを主人公とした真実のドラマ。

米興行収入が2億8000万ドル(約336億円)を突破し、社会現象となる大ヒットを遂げている本作だが、もう1つ大きな話題を集めているのが、イーストウッド監督の演出による無音のエンドロールだ。通常であれば、映画のテーマ曲とともに、スタッフ&キャストのクレジットが流れるが、本作においては一切音が入っていないのだ。

原作は13週にわたってニューヨーク・タイムズ紙べスト・セラー1位を独走したクリス・カイルの自伝「ネイビー・シールズ最強の狙撃手」。クリスは、2013年2月2日に、同じ心の病に悩む兵士エディー・レイ・ルース(当時25歳)によって射殺され、映画の公開を待たずして38歳の若さでこの世を去った。

現地時間2月11日からテキサス州の法廷で、殺人罪に問われているルースの裁判が本格化することになっており、映画の大ヒットを機に、再び世界の注目が集まっている。

クリスは退役後にNPO法人を立ち上げ、多くの兵士の心のケアに時間を費やした。戦場の英雄ではなく、真の英雄として、テキサス州ダラスのカウボーイズ・スタジアムで行われた彼の葬儀には1万人が参加した。エンド・クレジットでは、イーストウッド監督による彼への感謝と追悼の意が表現されている。

脚本を書き上げるためにクリスと多くの時間をともにした、脚本家ジェイソン・ホールはこの演出について、「音楽を入れないほうがいいとクリントが判断した。クリスに対する敬意の表れでもあるし、より崇高な理想のために命を捧げた全員への敬意の表れ。クリントからの感謝のお祈りなのだと思う」と語る。

さらに、本年度アカデミー賞6部門にノミネートされたことについては、「(クリスは)“信じられない”と思っただろう。きっと授賞式へは行かずに、自宅でブーツを脱いでテーブルに足を置いた状態で授賞式の放映を見るだろうね。賞にまつわる騒ぎには加担しなかっただろう。だが、戦争で戦う兵士たちや同じような状況を生きた人たちに、より多くの注目が集まれば嬉しいと思ったに違いない」とコメントしている。

9.11以降、混迷が続くイラク戦争を舞台にしているにもかかわらず、主人公とその妻が織りなす家族の葛藤とエモーショナルなドラマによって、アメリカの老若男女の共感を呼んでいる本作。イーストウッド監督によるエンドロールの演出までじっくり味わってほしい。【Movie Walker】

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