蒼井優と鈴木杏が語る、女優としての転機|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
蒼井優と鈴木杏が語る、女優としての転機

インタビュー

蒼井優と鈴木杏が語る、女優としての転機

青春のきらめき。そして蒼井優、鈴木杏という魅力的な女優二人のきらめきをギュッと詰め込んだ映画『花とアリス』(04)。このたび、『花とアリス』の前日譚を描くアニメ映画『花とアリス殺人事件』(2月20日公開)が完成。

声優として、蒼井と鈴木が元気いっぱいの少女・花とアリスとの11年ぶりの再会を果たした。鮮烈に覚えている人も多いことと思うが、それは彼女たちにとっても同じ。すっかり大人の女優になった二人にとって、『花とアリス』は「宝物」だというのだ。愛情たっぷりに、本作への思いを語り合ってもらった。

収録を終えて、アリス役の蒼井は「青春をもう一度味あわせてもらった」、花役の鈴木も「ご褒美のようだった」と喜びをかみしめる。

『花とアリス殺人事件』は、前作のメガホンをとった岩井俊二監督の初の長編アニメ映画で、花とアリスの中学時代の出会いを明らかにする物語だ。実写で演じた役柄を今度は声優として演じることとなったが、鈴木には不安もあったそう。

「10年を経て、年齢も重ねているので、肌や体だけでなく、声も心と共にのぶとくなっているような気がするんです。10代の声をできるかどうかは、心配だし不安でした。まずは花ちゃんをノックして、『いますか?』とやってみて」と、心の中に居続けた花を呼び覚ましてみたという。

一方の蒼井は、「私は、映画デビュー作(『リリイ・シュシュのすべて』)が岩井さんなので、田舎から出てきた、何一つ知らない状態を知られているんです。変に技術的なことを見せると『染まりよって』と思われるのかなとか、岩井組に入るときはとにかく恥ずかしくなってしまう」と笑う。

「女優という意味では、オムツも替えてもらったくらいの感じ」というように、蒼井にとって岩井監督は特別な存在。「女優としてのゼロ歳から知られているので、ゼロの状態でマイペースにやろうと思いました」と原点に立ち返って、再び『花とアリス』の世界に飛び込んだ。

花とアリスは自由奔放、気まぐれに動きまわり、ちょっとしたことも大事件にしてしまう多感な少女。鈴木は「まっすぐだよね」と蒼井と顔を見合わせる。さらに鈴木は、こう振り返る。「中高時代って、社会とかについても少しずついろいろなことに気づき始めて、ちょっとした出来事ひとつも大きな事だったりして。あの時期にしかない、エネルギーの塊みたいな存在だなと思う。マグマを収縮したみたいにずっと振動していて、あちこちスーパーボールみたいに跳ね返っていく。眩しくて、宝物のような時期です」。

蒼井は「最近すごく思うのが、自分が20歳前後でやっていた役ってすごく面白かったんだなって。歳をとって若い子達が眩しく感じるのって、そういうことなんだなと思って。役柄じゃなくてその年齢が面白い動物なんだと。『あの動物的な役をやりたい』と思っても、もういただけなかったりする」と、年齢を重ねたことで女優として演じる役柄にも変化が現れたという。鈴木も「そうだよね。今この年齢で動物的だったら、ただの迷惑な人になっちゃうよね」と蒼井と笑い合う。

蒼井が「それが今回、声優という形だったらまだできる。動物に戻れるというのは本当にうれしかった。自分の年齢の成長と共にやれる役も成長してしまうので、疑似体験でもあの時代を生きられたのはすごく楽しくて。ずっとやっていたいと思った」と思いを打ち明けると、鈴木も「本当にそう思う。すごくうれしかった」と、時間を飛び越えられたことを喜ぶことしきり。

11年前の蒼井は、「芝居のことも何もわからなくて、田舎から出てきた野生児だった」とのこと。蒼井にとって『花とアリス』は「女優を続けていきたい」と思えた、大きな転機となった作品だとか。「当時、釜山国際映画祭に招待していただいて、岩井さんとレッドカーペットを歩いたんです。岩井さんは韓国でも人気なので、すごい歓声で。その後ろを歩いて私はおこぼれを預かっていたのですが(笑)、ここには映画が好きな人しかいないんだと思うととても幸せな気持ちになった。それまでは学業優先に考えていたんですが、あの瞬間に体の芯から『映画って素晴らしい』と思って。中学卒業まで、高校卒業まで、と考えていたこのお仕事を、期限を決めずにやってみようと思った。あのタイミングで『花とアリス』に出会えていなかったら、私は今頃福岡に帰っていますよ」。

鈴木は、小学生の頃から女優として活躍してきた。真面目すぎるほど真面目で、ひとつの役に向き合うときはにがんじがらめになってしまうこともあるそう。「できないと思うと、悔しくて悔しくて、自分に対してなにくそ!と思ってしまう性分なんです。人に迷惑をかけることが許せなくて」とどこまでもストイック。

そんな鈴木だが、「10年間、もちろん良いこともあれば踏ん張ってきたこともあって。こうやって予期せぬときに、花とアリスに再び会えるというご褒美をいただけて本当にありがたいなと思った。ここから出発していることがたくさんあります。10代に戻りたいとは思わないけれど、あのどうしようもない素直さっていうのはだんだんとなくなっていってしまうもの。10代の素直さに気づくことはすごく大事なことだなと思いました」と、彼女たちとの再会が大きな刺激になっている。

思春期の花とアリス、そして自分自身にも再会した様子の二人。『花とアリス殺人事件』は、女優業へのさらなる励みともなったようだ。【取材・文/成田おり枝】

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