杏、演じることは「友だちが増えるような感覚」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
杏、演じることは「友だちが増えるような感覚」

インタビュー

杏、演じることは「友だちが増えるような感覚」

杉浦日向子の同名コミックを映画化した『百日紅~Miss HOKUSAI~』(5月9日公開)で、声優に初挑戦した杏。浮世絵師・葛飾北斎の娘で、父と同じく浮世絵師になったお栄の声を担当している。

監督は、『クレヨンしんちゃん』シリーズや『河童のクゥと夏休み』(07)の原恵一監督。杏にインタビューし、アフレコの感想や、本作への思い入れについて話を聞いた。

「お栄は23歳の女性で、素朴でもあり、強さもあり、真面目だけど、ちょっと不器用な女性です」

お栄は、凛とした江戸っ子ぶりが実に魅惑的な女性。役柄と声がとてもしっくり来ているが、彼女自身との共通点はあったのだろうか?

「いろんな役を演じる上で、毎回、共通点について質問されるのですが、実在の人物だと、自分と似ている点について言うこと自体がおこがましくて。それよりは憧れの方が大きいのかなと思います」

では、役にはどのようにアプローチしていくのか?

「毎回、自分が変身するというよりは、役と仲良くなる、友だちが増えるみたいな感覚でいます。もちろん自分の内なる感情として出すのですが、同一化するというよりは、すごく近い理解者になる感じがするんです」

今回は、初のアフレコということで、すべてにおいて原監督の指示を仰いだと言う。原監督からは「重く、低く、強く、ゆっくり話してほしい」とリクエストされた。

「若い役と聞くと高い声になりがちだけど、重さを出すようにと言っていただいたおかげで、彼女の強さが出たと思います。でも、自分が参加している部分は声だけで、それ以外の表情や動きは他の方が作ってくださったので、それをすり合わせるという作業が難しかったです」

江戸時代に、筆一本で生計を立てていたお栄を、杏は心からリスペクトする。

「あの時代背景で、女性が職業をもって自立している、しかもクリエイティブな分野でということで、本当に稀有な存在だと思いました。また、画風も西洋の技法を取り入れていたり、色彩が鮮やかだったりして、強さと実力を兼ね備えた方だと思いました」

本作は、お栄と、父・北斎や周りの人々との交流を生き生きと描いた人間ドラマ。北斎とお栄の親子の関係は、同じ俳優である父・渡辺謙と杏との関係性に重なる部分もあるのだろうか?

「時代も職業も違いますから、そこまでは考えなかったです。信頼関係もあるし、師弟でもあるし、ライバルでもある。親子だからと言って、お互いを庇護するべき存在としてとらえてない部分が2人らしいなと思いました」

映画、ドラマ、CM、バラエティ番組など、近年、八面六臂の活躍ぶりの杏だが、今後やってみたいことは?

「実は、以前、『アニメーション作品をやってみたい』と言ったら、今回、叶ってしまいました。将来何をやるかがわからない点が面白さでもあり、不安でもあると思います。だから、どんな役をもらっても、受け止められるフラットな自分をキープしていたいです」

毎回、違う作品で、いろんな表情を見せてくれる杏だが、今回『百日紅~Miss HOKUSAI~』のなかでも、お栄として力強く生きている。女優として、まだまだ無尽蔵の個性を放つ杏を、これからも見ていきたい。【取材・文/山崎伸子】

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