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真木よう子、過去を振り返り「諦めないことが良かった」

インタビュー

真木よう子、過去を振り返り「諦めないことが良かった」

『そして父になる』(13)に続き、是枝裕和監督作『海よりもまだ深く』(5月21日公開)に出演した真木よう子。是枝組で見せる彼女の自然体の表情は、見ていて実に心地良い。本作のキャッチコピーは「夢見た未来とちがう今を生きる、元家族の物語」だ。真木にインタビューし、本作で描かれる家族や愛について話を聞いた。

阿部寛演じる主人公・良多は15年前に一度、文学賞を獲って以来、全く売れていない作家で、好きなギャンブルを止めることができず、遂に妻から三行半を突きつけられたダメ男だ。真木が演じる良多の元妻・響子は、シングルマザーとして息子(吉澤太陽)を育てている。ある台風の日、たまたま良多の実家で居合わせた3人が、良多の母(樹木希林)と共に一夜を過ごす。

「良多を阿部さんが演じたことで、どこか可愛らしい憎めない男になりました。それに、良多は良多なりに父親としてきちんとやろうと思っているんです。ただ、不器用なだけで。彼のようにダメなところは、きっと男女問わず誰にでもあることだから、観た人はきっと共感できると思います」。

『海よりもまだ深く』というタイトルは、テレサ・テンの名曲「別れの予感」から来ている。真木に「海よりも深く人を愛したことはありますか?」と斬り込んでみると「ないです。ないでしょ」と即答する。こちらも「そうですよね」とうなずき、お互いに笑い合った。

でも実は本作の本題は、そこからなのだ。もっと普遍的で懐の深い幸せの価値観が、是枝監督ならではの語り口で綴られていく。たとえば、響子や樹木希林演じる母親の深い愛情もその1つだ。

樹木が何気なくつぶやく言葉1つ1つには、説得力がある。中でも「何で男は、いまを愛せないのかなねえ」というセリフは、真木もすごく共感できたそうだ。「私はいつも、いまを実感するというスタンスでいるし、過去に縛られることはイヤ。だからあのセリフはすごく好きでした」。

そんな真木にとっての幸せの価値観とは?「やっぱり自分の大事な人が元気で生きていてくれて、笑ってくれることじゃないですか。望むことは、ただそれだけです。でなければ、自分も幸せにはなれないし。私はいま、自分の娘だったり、母親だったり、父親だったりが幸せでいてくれることがすごくラッキーだと思っています」。

本作で投げかけられる「なりたかった大人になれているかどうか?」という問いについて、真木自身はどう受け止めたのか?「女優になりたいという夢は小学校の頃からあったので、それを叶えることはできたかなと。でも、昔描いていた大人というものは、ただ漠然としたものでした。『いま自分は果たして大人になれたのか?』と聞かれたら、自分自身は大人だとは思っています。それは、ダメなところも含めてですが」。

女優として第一線を走り続けている真木だが、やはり「諦めないことが良かった」と振り返る。「10代や20代の時は、よくオーディションに落ちて、ダメかもしれないと思った瞬間はいっぱいありました。そういう時、自分に言い聞かせてきたのは、『ここで諦めるかどうかで今後の人生が変わっていく』というものでした。だから、ずっと頑張ってこられたのかなと。もちろん、こんなはずじゃなかったと思うことは、仕事においても私生活においてもたくさんあります。でも、別に無理にポジティブになる必要もないと思うし。流れるままに生きている感じです」。

自分を着飾るセールストークは一切なく、胸の内をそのまま言葉にしてくれた真木よう子。女優としても、女性としても、しなやかでとびきり格好良い。『海よりもまだ深く』には、いろいろな意味で本当の愛の価値観を再認識させられる。【取材・文/山崎伸子】

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