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柳楽優弥「こういう衝撃作は、中途半端にやっちゃいけない」

インタビュー

柳楽優弥「こういう衝撃作は、中途半端にやっちゃいけない」

柳楽優弥が、役者としての凄みを見せつけた『ディストラクション・ベイビーズ』(5月21日公開)。彼が演じたのは、殴って殴って殴りまくる青年・泰良(たいら)役だ。その姿はケンカ好きのチンピラではなく、ちょっと近寄りがたい孤高のオーラをまとったカリスマに見えてくる。そこで柳楽に本作へ懸けた思いについてインタビューした。

本作は愛媛県松山市を舞台に、若者の狂気と欲望を描く青春群像劇。東京芸術大学大学院修了作品『イエローキッド』(10)や、スイス・ロカルノ国際映画祭、オランダ・ロッテルダム国際映画祭で特別上映された、ももいろクローバー出演の短編『NINIFUNI』(11)などで注目された真利子哲也監督の商業映画デビュー作となった。

「いままでは演じる役について調べたり、掘り下げたりしていくというやり方でしたが、今回は現場で空気感を感じることの方が重要だと思いました。だから、いままでやってきたものを自分のなかで1回捨てて、監督と一緒に築き上げていった感じです。『何でケンカをするんですか?』と聞いたら『楽しければええけん』と5回くらい言われまして。そこまでぶれない人はいないので、監督をしっかり信じて挑みました」。

ケンカのシーンが何度も登場する泰良役。「気持ちを上げるのが大変でした。朝一からケンカのシーンでも、アクション部さんが気合バリバリで教えてくれるので。前半は慣れなかったけど、途中からは家を出る前からエンジンをかけるようにしていきました。徐々に痩せていって腹筋が割れ、軽くなっていきました」。

求められたのは、格好良いキレキレのアクションではなく、泥臭いストリート・ファイトだった。「中途半端に2、3回型合わせするだけでは無理で、やればやるだけ自然に見えてくるんです。超キツくて、1日に6、7時間はやっていましたが、アドレナリンがハンパじゃない状態でした。こういう役をやっておいてなんですが、実は、争ったりするのはあまり好きじゃなくて、『もっと笑っていこうぜ』というタイプなんですが、本当にその時は切り替えていました」。

本作には腹をくくって挑んだという柳楽。「こういう衝撃的な映画は、中途半端にやっちゃいけない枠だなと。実際、撮影はスーパーハードで、もう1回やれと言われたらできないんじゃないかとも思っています。それくらい懸けてました」。

タイトルの“ディストラクション(破壊)”にちなみ、自身のなかで壊したいものについて聞いてみたら「英語を勉強しない自分を壊したい」と言う。「覚えたいのにやらないんです。20代の課題ですね」。

第57回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作『誰も知らない』(04)で、当時史上最年少の14歳で主演男優賞を受賞している柳楽だけに、海外の名監督との仕事に興味があるのはうなずける。

「(アレハンドロ・ゴンサレス・)イニャリトゥとか、(クエンティン・)タランティーノ、アン・リー、ホウ・シャオシェンとか、憧れる監督はたくさんいます。でも、気持ちが半端だから英語を勉強しないのかもしれない。やっぱり勉強しないと。僕は映画祭などで海外に行った時、ちゃんと英語のプロフィールを渡すようにしています。捨てられているのかもしれないけど、そこらへんは貪欲にやっておかないともったいないから」。

『ディストラクション・ベイビーズ』では、一皮むけた怪演を見せた柳楽優弥。そう遠くない日、再び世界に名を馳せるスターになるのではないだろうか。【取材・文/山崎伸子】

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