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シェイクスピア「真夏の夜の夢」映画版はズバリ沖縄!―No.20 大人の上質シネマ

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シェイクスピア「真夏の夜の夢」映画版はズバリ沖縄!―No.20 大人の上質シネマ

“シェイクスピア in 沖縄”――本作の魅力はこのひと言に尽きるといっていいだろう。『真夏の夜の夢』は言わずと知れたウィリアム・シェイクスピアによる祝祭劇だが、舞台をアテネの森から沖縄の島へ、BGMをオーケストラから三線の音色へと変貌を遂げた時点で、本作は全く別の風合いを持つ現代のおとぎ話に生まれ変わった。

舞台となるのは、大昔から“キジムン”と呼ばれる精霊たちが人間たちの幸福を願い、守ってきた沖縄の小島・世嘉冨島(ゆがふじま)。この島で生まれ育ち、小さい頃から人間の血を半分受け継ぐ半端妖精のマジルー(蔵下穂波)と話すことができたヒロイン・ゆり子(柴本幸)が、不倫の恋に疲れて、東京からこの島に戻ってくるところから話は始まる。

物語の大筋はシェイクスピアの戯曲に基づいているが、メガホンを握る中江裕司監督は、『ナビィの恋』(99)など沖縄を舞台にした作品を撮り続けている人物。沖縄独特の風土を盛り込んだ本作では、精霊“キジムン”と人間たちの関係を通して、現代人が忘れつつある“感謝の気持ち”と“信じる心”の大切さを問いかける。人間たちに忘れ去られたキジムンたちが次々に姿を消していく中で、マジルーは島で本来の自分を取り戻したゆり子に対してこう言う――「思い出さずに、忘れずにいておくれ。いつでもどこでも、ゆり子の最高の幸せを願っているよ」と。

人間は自分一人で生きていると錯覚しがちだが、つねに誰かに見守られ、支えられていることを忘れてはいけない。そんなストレートなメッセージが、ゆり子とマジルーが織り成す交流からしっかりと伝わってくる。そして人間の心の豊かさを育むのは、“感謝の気持ち”と“信じる心”であり、いくら物質的に裕福になったとしても、それらを失ってしまっては本当の意味での豊かさを得ることなどできないと、この映画は教えてくれるのだ。

そして、この“心の豊かさ”というテーマに、沖縄独特のゆったりとした方言や民謡のリズムが驚くほどしっくりと馴染む。沖縄ブームの火付け役ともいえる人気ドラマ「ちゅらさん」の“おばぁ役”で有名になった平良とみの出演や、沖縄民謡の名手として知られる登川誠仁による劇中歌・唄三線も、大人の心をくすぐるよきエッセンスとなっている。【トライワークス】

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