イリーナ・クプチェンコ
She
ある夜突然やって来た“彼女”の元夫の“彼”。“彼女”のアパートの一室で展開する元夫婦の葛藤を二人の会話だけで描く。監督は「光と影のバラード」のニキータ・ミハルコフ。ソフィヤ・プロコフィエワの戯曲『目撃者なしの対話』のモチーフを元にミハルコフ、プロコフィエワ、ラミス・ファタリエフが脚色。撮影はパーヴェル・レベシェフ、音楽はエドゥアルド・アルテミエフとそれぞれミハルコフ作品の常連が担当。美術はアレクサンドル・アダバシャン、イーゴリ・マカーロフ、アレクサンドル・サムレキンが担当。出演はイリーナ・クプチェンコ、ミハイル・ウリヤーノフの二人。
彼女(イリーナ・クプチェンコ)は夫ヴァーリヤヘの手紙を書いていた。アパートの一室でテレビのコンサート番組を聴きながら、その曲にまつわる昔の思い出を回想する彼女。と、その時突然、九年前に別れた夫の彼(ミハイル・ウリヤーノフ)が入って来た。彼は、彼女と離婚した後、アカデミー会員の教授と結婚、二人の間にはナターリヤという女の子がいた。その日はそのナターリヤがピアノのコンサートでドビュッシーを弾いたので、ごきげんで酒も少し入っていた。半年間、息子のジムカのことを気にもとめようとしなかった彼の突然の訪問に戸惑う彼女。二人の共通の友人ポーリカの結婚話から、しだいに二人の会話は過去ヘと遡っていった。彼は勝手に酒を飲み息子の部屋に入ってステレオをかけて踊り出した。あげくの果てに、部屋に鍵をかけて彼女を追い回した。彼は彼女と結婚する前ニーナという女性とつき合っていた。ニーナは彼の子を産み落とした直後死んでしまい、彼は彼女と結婚し、彼女は、その子供を自分の子として育てる決心をしたのだ。その子供がジムカだ。その夜は、ジムカは、彼女が新たに結婚する男、つまりジムカの新しい父親になるヴァーリヤのところに行って留守だった。ジムカは彼女が自分の母でないことは知らなかった。彼女がヴァーリヤとやがて結婚するであろうことを知って嫉妬する彼。彼はついに、もし彼女がヴァーリヤと結婚するならジムカを連れて帰ってしまうとヒステリックに叫ぶ。自分の子のように育て、そのために実の子を生むことを諦めた過去をもつ彼女にとって、それは残酷な言葉だった。彼女は涙ながらにヴァーリヤとジムカのもとに電話をした。「もうここへ来ないで……」。彼と彼女が物置に入ったとき、鍵がこわれて二人は閉じ込められてしまった。彼は本性をむき出しにし、自分が無能であること、妻が浮気したこと、娘のナターリヤにも軽蔑されていることなどをわめき、この家しか安らぎがないと哀願した。しかし、彼女はきっぱりと言い切った。「私はもうあなたを愛していないわ」。しつこく食いさがる彼にうんざりしながら泣いている彼女。その時、物置のドアを斧でこじあける音が響いた。彼女の電話の様子を心配したヴァーリヤがかけつけたのだ。明るい光が部屋にさし込まれた。思わず彼女は叫んだ。「ヴァーリヤ」。
監督、脚色
原作、脚色
撮影
音楽
美術
美術
美術
脚色
字幕
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