ブライアン・スタイナー
Tom
戦争のために消耗品のごとく人間性を奪われ短い人生を散らしていった若者の悲痛な青春を描く。製作はシェームズ・クイン、監督はステュアート・クーパー、脚本はジャーナリスト出身のクリストファー・ハドスンと、ステュアート・クーパー、撮影は「2001年宇宙の旅」のジョン・オルコット、音楽はポール・グラス、編集はジョナサン・ジリが各々担当。出演はブライアン・スタイナー、デイヴィッド・ハリーズ、ニコラス・ボール、ジェリー・ニーサム、ジョン・フランクリン・ロビンズ、ステラ・ターナーなど。
20歳のトム(B・スタイナー)に召集令状がきた。彼は両親に別れを告げ、ロンドンから南へ向かった。折から町は大空襲にあい、廃墟と化して惨状をきわめていた。兵営では上司たちがトムにつらくあたり、トムはそこに人間的なものがすべて剥奪されていくのを感じた。しかも軍事訓練では橋から落ちるなど、とても優秀な兵士になれそうもなかった。戦友のアーサー(N・ボール)は戦争が終った後の生活を夢みていたがトムには希望も明るい未来ももてなかった。新しく始まった激しい訓練のあいまにトムは暇をもらい村のダンス・ホールで若い娘(J・ニーサム)に出会い、初めて人間的なふれ合いを感じる。しかし、またアーサーたちとトラックで移動させられ、退廃的な兵隊生活は続く。兵士たちは、この世とかかわりのある手紙や籍などをすべて焼きはらうように命令される。生きて帰れないと悟ったトムは21歳の誕生日に、遺言状を書き、髪を切り写真をそえて両親に送った。トムは、あのダンス・ホールで出会い別れた娘との永遠の別れの儀式を想像し、その中で二人は結ばれる。早朝、ノルマンディ上陸作戦は開始され、ドイツ軍との猛攻撃がはじまった。壮烈で悲愴な戦争は続き、死んだ兵士たちが山をなして岸辺に送り返された。その死者たちの群れのなかに、頭に銃弾を浴びてあえない最後をとげたトムの姿もあった。
Tom
Jack
Arthur
The Girl
Dad
Mum
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