セルゲイ・ボンダルチュク
Andrei Sokolov
「オセロ(1955)」でオセロ役を演じたセルゲイ・ボンダルチュクの第一回監督作品。ミハイル・ショーロホフの同名小説をY・ルキンとF・サヤフマゴノフが共同で脚色、撮影はウラジミール・モナホフ、音楽をヴェニアミン・バスネルが担当。出演は監督のセルゲイ・ボンダルチュク自身、「静かなるドン」のジナイーダ・キリエンコ、ほかにユリ・アウエリン、パーヴェル・ボリスキンら。製作・セルゲイ・ボンダルチュク。なおこの作品は一九五九年度モスクワ映画祭でグラン・プリを受賞、ボンダルチュクは六〇年度レーニン賞を受けた。
アンドレイ・ソコロフ(セルゲイ・ボンダルチュク)は一九〇〇年にドン河の畔ヴォロネジに生れた。若くして革命に加わり、一九二二年の飢饉で家族を失い天涯孤独になった。苦しい青春時代、大工をしながら同じ境遇の娘イリーナ(ジナイーダ・キリエンコ)と結婚した。貧しくも幸福な家庭に長男アナトリー、二人の娘オレンカとナステンカが生れた。第二次大戦が勃発、ソコロフは妻子と別れて輸送部隊の一員として出征した。前線へ弾薬輸送の途中、独軍機の攻撃を受けソコロフは失心、気がついた時には彼は独軍の捕虜となっていた。長い辛い捕虜生活が始まった。ドイツ、ポーランドの収容所を転々とした。疲労と傷心の連続、絶望の毎日、そんな彼に生きる力を与えるのは故郷に残したイリーナと子供たちの面影だった。ヨーロッパ戦線で連合軍の反撃が開始された。収容所の監視のスキをみてソコロフは二年ぶりに友軍陣地に帰りついた。一カ月の特別休暇をもらったソコロフは、一目散に故郷に向った。夢にまでみた故郷の家はなかった。激しい空襲は妻も子供も家もすべてを奪い去った。残る唯一の生きがいは砲兵学校を卒業して大尉に進級し、最前戦で活躍しているアナトリーだった。休暇をきりあげてソコロフは前戦に復帰した。戦争は終った。戦勝に沸く故国に帰ったソコロフを迎えたのはアナトリーの戦死の報だった。生きる希望の総てを失ったソコロフは、想い出多き故郷を去って長距離トラックの運転手になった。ある日、道ばたで遊んでいる一人の戦災孤児ワーニャをみつけた。今は亡きアナトリーの幼少の頃の面影をみたソコロフは、車から下りてワーニャを固く抱きしめた。ソコロフとワーニャの新しい生活が始まった。失望のどん底にあるソコロフもワーニャの笑顔をみるたびに、生きる望みを感じた。
Andrei Sokolov
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