マリア・フィオーレ
Carmela
1952年度カンヌ国際映画祭グランプリ、同年度セルズニック・ゴールデン・ローレル賞作品。「ロミオとジュリエット(1954)」のレナート・カステラーニとエットーレ・マリア・マルガドンナの原作をカステラーニとティティナ・デ・フィリッポが脚色、カステラーニが監督。撮影はアルトゥロ・ガルレア、音楽は「終着駅」のアレッサンドロ・チコニーニ、出演は無名の新人ばかりで、マリア・フィオーレ、ヴィンチェンツォ・ムゾリーノなど。製作はサンドロ・ゲンツィ。
ナポリの近郊の小さな村--アントーニオ(ヴィンチェンツォ・ムゾリーノ)は兵隊から帰ってきた。貧しい家庭の長男である彼は母や姉妹を養うため休む間もなく仕事をしなければならなかった。だが、どこも不景気、この小さな村にも失業者があふれ、教会前の広場には職を探す人たちが毎日集まっていた。ある日、広場に立つアントーニオに花を投げて笑いながら逃げていった女がいた。花火屋の娘カルメラ(マリア・フィオーレ)だ。アントーニオは、しがない職を転々としたが、彼の日当はいつも母に先取りされる始末。煙草も喫えない。そんな彼を少しでも明るくしてくれるのは、いつも彼の後を追うように姿を見せて逃げていくカルメラだった。ある日、森で二人は会った。カルメラは、貯金もあるから結婚しようと持ちかけるが、生活に追われるアントーニオはそれどころでない。二人の噂を聞いたカルメラの父も、彼が貧しいことを理由に反対した。金が欲しい、人並の生活がしたい、と思うアントーニオは教会の鐘つきに雇われる一方、夜はナポリへ行って秘かに共産党のビラ貼りを手伝った。が、これが司祭にばれて教会はクビ。ナポリへ出て金持ちの未亡人が経営する映画館にフィルム運びの仕事にありつく。女主人の息子の病気を救うため自分の血を提供した彼は映写技師に昇格する。一方、ナポリへ行ったまま便りのないアントーニオに新しい恋人ができたという噂を聞いたカルメラは父の工場の花火に火をつけた。そのカルメラが父についてナポリへ来たついでにアントーニオの映画館へ寄ったが、カルメラが女主人と彼との間を嫉妬したことから、アントーニオはそこもクビ、村へ帰って貯めた金で姉を結婚させてやる。間もなくカルメラは家出する。交通事故で怪我をしたというカルメラの知らせでアントーニオは病院へ駆けつけるが、これは彼女がアントーニオを誘い出し、二人で父親に結婚を承諾させようという計略だった。こんなに思いつめているのに父親は冷かった。「二人とも出て行け!」。恋も諦め貧しさに耐えてきたアントーニオに怒りがこみあげてきた。「俺の欲しいのは持参金じゃない、カルメラの汚れていない美しさだけなんだ!」。二人は父の家を後にした。アントーニオはもう貧しさは怖くなかった。村人たちも二人に心から祝福を送った。神様は人間をお作りになったんだ。食べる物だって授けてくれるにちがいない--アントーニオはこう心に思ってカルメラを抱きしめた。二人の胸の中には小さいが明るい希望が宝石のように光っていた。
Carmela
Antonio
Antonio's Mother
Carmela's Father
Antonio's Sister
Carmela's Mother
Madame of Cinema
監督、原作、脚色
原作
製作
撮影
音楽
脚色
[c]キネマ旬報社