宮口精二
下岡雄次(捜査第一課刑事)
『小説新潮』所載の松本清張の同名小説を橋本忍が脚色、野村芳太郎が監督した。兇悪犯を追う二人の刑事と、張込み先の女の姿をドキュメンタリータッチで描いた社会派ドラマ。東京・上野から佐賀に向けて列車を乗り継ぐアヴァン・タイトルが素晴らしい。出演は大木実、宮口精二、高峰秀子、田村高廣。ほかに松本克平、藤原釜足、浦辺粂子、多々良純、川口のぶなど。第32回・1958年キネマ旬報ベスト・テン第8位。
警視庁捜査第一課の下岡と柚木は、質屋殺しの共犯石井を追って佐賀へ発った。主犯の自供によると、石井は兇行に使った拳銃を持っていて、三年前の上京の時に別れた女さだ子に会いたがっていた。さだ子は今は佐賀の銀行員横川の後妻になっていた。石井の立寄った形跡はまだなかった。両刑事はその家の前の木賃宿然とした旅館で張込みを開始した。さだ子はもの静かな女で、熱烈な恋愛の経験があるとは見えなかった。ただ、二十以上も年の違う夫を持ち、不幸そうだった。猛暑の中で昼夜の別なく張込みが続けられた。三日目。四日目。だが石井は現れなかった。柚木には肉体関係までありながら結婚に踏みきれずにいる弓子という女がいた。近頃二人の間は曖昧だった。柚木には下岡の妻の口ききで、風呂屋の娘との条件の良い結婚話が持ち上り、弓子の方には両親の問題があったからだ。一週間目。柚木が一人で見張っていた時、突然さだ子が裏口から外出した。あちこち探した末、やっと柚木は温泉場の森の中でさだ子と石井が楽しげに話し合っているのを発見した。彼が応援を待っていると、二人はいなくなった。再び探し当てた時、さだ子は石井を難きつしていた。だが彼女は終いには彼に愛を誓い、彼と行動を共にするといった。しかし下岡刑事が到着し、石井はその温泉宿で逮捕された。この張込みで、柚木は女の悲しさを知らされ、弓子との結婚を決意した。「今日からやり直すんだよ」柚木は小声で石井を慰めた。それは自分へ言い聞かせる言葉でもあった。
下岡雄次(捜査第一課刑事)
下岡満子(下岡の妻)
下岡辰男(下岡の長男)
柚木隆男(捜査第一課刑事)
高倉弓子(柚木の恋人)
父
母
横川仙太郎(銀行員)
横川さだ子(横川の後妻)
繁子(肥前屋の女主人)
秋江(肥前屋の女中)
信子(立花湯の娘)
信子の母
石井(強盗殺人犯人)
山田(強盗殺人犯人主犯)
佐賀警察署長
佐々木(佐賀署の巡査)
捜査課長
捜査係長
血液銀行係
製本屋
洗濯屋
飯場の人夫頭
刑事
立花湯の釜焚き