トミー・ベルグレン
Joe_Hill
フォーク・シンガーの元祖であり、労働運動の活動家でもあったジョー・ヒルの放浪の人生を描く作品。製作・監督・脚本は「みじかくも美しく燃え」のボー・ウィデルベルイ、撮影は永年ウィデルベルイとコンビを組むヨルゲン・ペルソン、音楽はステファン・グロスマンがそれぞれ担当。出演は「みじかくも美しく燃え」のトミー・ベルグレン、アンジャ・シュミット、カービン・マラーブ、エヴァート・アンダーソン、キャシー・スミス、デイヴィッド・モリッツなど。
故国スウェーデンを離れたジョー・ヒル(トミー・ベルグレン)と弟ポールにとって、ここニューヨーク東側地区の貧困は想像を越えるものであった。ポールは耐えきれず、単身、西部へ旅立った。1人残ったジョー・ヒルは、ふとしたことで悪戯小僧のフォックス(カービン・マラーブ)というあだ名の少年と知り合った。盗みばかり働くが、底抜けに明るく、ジョーの心を和ませた。ある日、メトロポリタン・オペラ劇場の非常階段でオペラに耳を傾けていたジョーは、彼と同種の客を見つけた。彼女の名はルチア。美しい娘ルチアの姿はジョーの心に深く刻みこまれた。ジョーは弟のいるプレインフィールドへ旅立った。しかし弟はすでにそこを去っていた。彼は西部を目指し、途中知り合ったブラッキー(エヴァート・アンダーソン)と気ままな、自由な放浪の旅を続けた。ある日、2人は異様ないでたちの一団に出会った。各地の労働者を組織して労働運動を推進しているIWWの連中だった。ジョー・ヒルとブラッキーがある農家の納屋で寝ているとき、キャシー(キャシー・スミス)という娘に見つかるが、彼女はジョーに好意を抱き、ジョーはしばらくの間キャシーとののどかな生活を送ることに決めた。ブラッキーは1人旅立っていった。再び放浪の旅へ出たジョーは、ある鉄道でレール運びをし、その苛酷な労働に憤って待遇改善を訴え、労働者の闘争意識を高めていった。サン・ディエゴに着いたジョーは、救世軍の唄う前で労働運動の演説をぶつ男が警官に排除されるのを見て不思議に思った。なぜ救世軍がよくて、こちらの演説がいけないのだろうと。その日からジョーの作詞活動が始まった。替え歌で労働運動を提唱するジョーに、さすがの警官たちもお手上げであった。1913年、ジョー・ヒルは正式にIWWに入会した。レストランで皿洗いをして料理人たちを、また炭鉱で働いて炭坑夫たちを煽動していった。秋が去り、雪のちらつくある日、街頭で演説していたジョーのそばを、容姿をかわれて、今ではオペラのプリマドンナになったルチアが通りかかった。そして数日後、マクヒュー医師のところへ銃で胸を撃たれたジョー・ヒルが転がり込んできた。翌日、ジョー・ヒルは雑貨商殺しの容疑者として逮捕された。もちろん彼自身、まったく身に覚えのないことだった。ルチアをかばうジョーに、事件当日の行動を明らかにする術はなかった。証言は次々とジョーに不利なものが続き、ついにジョーに有罪の判決がおりた。IWWメンバーの努力も虚しく、刑執行の日は来た。ジョー・ヒルは短い遺書を残して処刑場へ向かった。死刑は簡単に終わった。ジョー・ヒルの遺体の灰は、彼の遺言通りにIWWの手によって各地の支部に送られた。
Joe_Hill
Lucia
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David
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