菅原文太
沖田勇
やくざ組織に挑戦する愚連隊と組織の中で巧みに泳ぐ二人の男を通して“暴力”のナマの姿を描く。技術的には、ノーライト、ノーレフ、手持ちカメラ、100ミリ望遠レンズを主体に撮影、また全篇4倍増感現像で粒子の荒れた画像を出している。脚本は「博徒斬り込み隊」の石松愛弘、監督は脚本も執筆している「軍旗はためく下に」の深作欣二。撮影は「喜劇 セックス攻防戦」の仲沢半次郎。
川崎のうす汚れた売春街に住んでいる沖田勇は、売春婦だった母親が死んでからは、チンピラの手下となって馳げずりまわっていた。そして、感化院とシャバを往復しているうちに、男は街の愚連隊の番長となっていた。ところが、何年かたって、滝川組が川崎を牛耳るようになった。組織に支配されるのを嫌う勇は、滝川組と対立し組員を斬って刑務所入り。勇を失った仲間は自然離散していった。それから五年--。日本は終戦後の復興処理が急速に進みあちこちの都市では、大きなビルディングが建ち、その姿を変えていった。川崎も例外ではなく、ただ勇が住んでいた売春街の一角だけは取り残され、今だに昔の面影を残していた。勇が出所したのはそんな頃だった。彼の眼に写ったのは街の変貌であった。暴力団絵図も変り、現在は、滝川組と新興暴力団の矢頭組の二つの組織が川崎を二分していた。勇はかつての愚連隊仲間の安夫、鉄男、サブ、次郎、それに勇の女君代、一匹狼の木崎達と手を結び再びこの川崎で羽振りをきかそうと二つの組織を相手とるべく立ち上った。手始めに、滝川の子分達をつぎつぎと痛めつけていった。狂った野獣のように暴れまくる男達を滝川が黙って放っておく筈がなく、ある夜、数人の子分を使いサブ達を袋だだき、勇も拳銃で撃たれ負傷してしまう。この両者の抗争を静観していた矢頭組組長矢頭は、勇達を傘下に置こうと木崎を口説き桜会という組織を結成。矢頭組が勇達の後押しをするとなると滝川は手出しが出来なくなる。そこで滝川はこの機会に矢頭組をも壊滅させるべく関西系暴力団サイエイ会々長・大和田英作をかつぎ出す。やがて、川崎の街には、サイエイ会行動隊郡司組を始め、ぞくぞくと同系の組織が集結する。傷がすっかり癒えた勇はこのサイエイ会の圧力に最後まで抵抗しようと意気込む。一方、矢頭は、この不利な状況に、幹部の風間に滝川暗殺を命令。その夜、風間は見事滝川暗殺に成功。しかし自らもサイエイ会の白刃に倒れる。幹部を一人失ってまでも滝川を殺ることを強行した矢頭の頭には滝川組を潰し、大和組と手を握りたいと冷酷な考えがあった。大和田もこの矢頭の度胸に惚れこみ手を組むことに同意する。しかし、今だに抵抗を続ける桜会を抹殺するという条件を出した。矢頭は勇の命だけは助けると約束を取り付ける。川崎の工場跡のアジトにたてこもり必死に抵抗していた勇達は、矢頭が大和田と手を結んだ事を知り愕然とする。脅える子分達を思った勇は自ら指をつめ詫びを入れるのだった。しかしその勇を郡司組は痛めつける。その勇を庇おうとした君代は郡司組に殺される。押し黙ったまま、君代の死骸を見つめる勇は、遂に怒りが爆発。矢頭、郡司等に向って突進するが、多勢に無勢、背後より銃弾が勇の背に撃ち込まれる。倒れる勇。立ち去ろうとする矢頭はじっと身動きせぬ勇を瞶める。「これが“やくざ”だ」と言わんばかりに……。
沖田勇
矢頭俊介
君代
木崎
谷口
かつ子
勇の母
鉄男
安夫
宮原
風間
滝川
大和田英作
郡司猛夫
ユカリ
かおる
牢名主
唐沢
川辺
監督、脚本
脚本
撮影
音楽
美術
編集
照明
録音
助監督
企画
企画
企画
スチール