ボラ・アルタシュ
ユスフ
現代トルコ映画界を代表するセミフ・カプランオール監督が、幻想的な森を舞台に少年ユスフの成長を通して父、母との絆、人の心の機微を情感豊かに描くユスフ三部作の最終章。主演は、本作が映画初出演となるボラ・アルタシュ。第60回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作。
幼いユスフ(ボラ・アルタシュ)は、手つかずの森林に囲まれた人里離れた山岳に両親と共に住んでいる。養蜂家の父、ヤクプ(エクダル・ベシクチオール)は、森深くにある高い木のてっぺんに仕掛けた特製の巣箱で黒蜂蜜の養蜂を行って生計を立てていた。ユスフにとって、森は神秘に満ちたおとぎの国で、父と森で過ごす時間が大好きだった。木漏れ日の眩しさで、目を伏せたくなるくらい高いところで仕事をしている父を、ユスフは憧憬にも似た眼差しで見つめる。ある朝、ユスフは夢を見た。父に「夢を人に聞かれてはいけない」と教えられたユスフは、父にだけこっそりと夢をささやく。すると父は「その夢は誰にも話しちゃダメだ」とユスフに告げる。この夢は二人の間で永遠の秘密となった。小学校に入ったばかりで読み書きを学んでいるユスフは、クラスメイトの前で教科書を読んでいると突然吃音になり、他の生徒たちから笑われてしまう。上手に音読できたら先生からもらえる“よくできましたバッジ”を自分一人だけがもらえないのではないかと焦っていた。そんな中、森の蜂たちが忽然と姿を消す。ヤクプは家族の生活のため、蜂を捜しに遠く深い森に巣箱を仕掛けに入っていく。すると父が旅立ったのと同時に、ユスフの口からは言葉が失われてしまう。母のゼーラ(トゥリン・オゼン)はそんなユスフを心配し、どうにかして話をさせようとするがユスフの口は閉ざされたままだった。父がなかなか戻らず、不安がっているユスフを目にしたゼーラは、彼に昇天祭(ミラージュ)の夜を祖母の家で過ごさせることにする。そこで預言者の昇天の話を聞いたユスフは、預言者に父をなぞらえ、必ず帰ってくると信じるようになる。翌日、母とアララト山の祭りに父を捜しに行くも父は現れず、ユスフの心は晴れない。月日が流れ、ユスフに心配をかけまいと毅然と振る舞っていた母さえも、日を追うごとに哀しみに暮れていく。そんな母を、ユスフは大嫌いだったミルクを飲んで励まそうとする。そしてユスフは一人幻想的な森の奥へ入っていく……。
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