『密輸 1970』緊急来日したチョ・インソンと大谷亮平が初対面!リュ・スンワン監督は『修羅雪姫』『仁義なき戦い』ら日本映画の影響明かす
昨年韓国で大ヒットを記録した海洋クライム・アクション『密輸 1970』(公開中)の公開記念舞台挨拶が7月13日に新宿ピカデリーにて行われ、公開にあわせ緊急来日した密輸王クォン役のチョ・インソンとリュ・スンワン監督、そして韓国でブレイクしたのち日本で活動を始めた“逆輸入俳優“としても有名な大谷亮平がスペシャルゲストとして登壇。当時韓国語を勉強するために見ていたドラマがチョ・インソン主演の作品だったといい、初対面を笑顔で喜んだ。
満席の観客を前にリュ・スンワン監督は、「劇場をいっぱいにしてくださって、本当にありがとうございます。このようにお招きいただいて、本当にうれしく思います。韓国では昨年とても暑い夏にこの映画が公開されまして、少し涼しさを届ける映画になれたのかなということで、今年日本でもこの7、8月に皆さまに涼しさをお届けできるようになればうれしいです」と笑顔であいさつ。日本へは頻繁に旅行でも来ており、先日も東京でファンミーティングを行ったチョ・インソンは「この後、また大阪でファンミーティングが予定されているんですけど、このように監督と東京でまた劇場で皆さまとご一緒することができて本当にうれしく思っています」と喜びを伝えた。
2015年の『ベテラン』公開以来9年ぶりの公式来日となるリュ監督。2021年に亡くなった、とても好きだったという千葉真一の話に及ぶと「以前、千葉真一先生にお会いできて本当に光栄に思っていたんですけど、数年前にお亡くなりになられてとても胸が痛みました」と述懐。「千葉真一さんの映画はすばらしい作品が多いですが、アクション映画もすばらしくて、その中でも『殺人拳』シリーズがとても好きです」と明かし、「でも本作に直接的な影響を与えたのは日本の1970年代の作品で、女性が主人公の復讐劇のような日本映画、そのスタイルから影響を受けました」と話す。なかでも『修羅雪姫』(73)や「女囚さそり」シリーズがとても好きだそうで、「本作で使用されている原色的な照明の使い方やシーンの転換などはそれらの作品からの影響が大きく、さらにこの映画に登場するパク・ジョンミンさんが演じたドリのヘアスタイルや衣装は、深作欣二監督の『仁義なき戦い』シリーズの中に登場するヤクザの姿から影響を受けて形作っていきました」と日本映画からの影響を受けた貴重な制作の裏側を語った。
また本作で特に大変だったというアクションシーンについて、リュ監督は「チョ・インソンという傑出した俳優がいたからこそ可能だったと思っています」とチョを絶賛。「前作『モガディシュ 脱出までの 14日間』でご一緒しながら、彼が持っている能力を既に垣間見ることができ、それで今回は彼の能力をどこまでこの映画の中で引き出すことができるのかということを絶えず考えながら作っていました。アクションシーンを作る上では、監督の役割よりもやはり俳優がどう演じるかというところにかかってくると思います」とその難しさを明かす。
いっぽうのチョ自身も本作でのアクションシーンについて、「やはり本作で大変だったのは、地上よりも水中のアクションシーン。水の中の浮力と戦いながら演じなければならなかったので、その水の中でアクションをされた俳優の皆さんはすごく大変だったと思います。でもそれを素敵に演じられたことで、このような結果物が得られたのではないかと思いますし、怪我なく無事にこの映画を撮り終えることができてとてもよかったです」と笑顔を見せる。
そしてここでスペシャルゲストとして、『バトル・オーシャン 海上決戦』(19)など韓国映画にも出演し、今月からスタートするドラマ「スカイキャッスル」(韓国ドラマ「SKY キャッスル~上流階級の妻たち~」のリメーク版)にも出演する大谷亮平が花束を持って登場。さっそく本作の感想を聞かれると「めちゃくちゃ面白かったです。水中アクションなど監督がお得意のアクションシーンもあり、ものすごく見ごたえがあったんですけど、結構1人1人出てくる登場人物が絶望的じゃないですか(笑)」といい、「すごくみんな追い込まれていって…なのになんだろう、この終わった後の爽快感、非常に後味がよくて思い返すと一つ一つなかなか大変なシーンで気持ちが沈みがちなんですけど、音楽やファッション、監督が作られる世界観で最後は気持ちがすごくすっきりして、とても素敵な映画でした」と興奮気味に語った。
そんな大谷は韓国に渡った際、韓国語の勉強で使用していたのがチョ・インソンが主演していたドラマ「春の日」だったといい、「だいたい20年ぐらい前にそれを題材に僕はスタートしたんですけど、その時のチョ・インソンさんの役が結構不良っぽい役立だったので、めちゃめちゃセリフが難しくて。でもまだいろいろ覚えてます」と当時のことを振り返ると、チョが「でも『春の日』というドラマは実は日本のドラマ『星の金貨』が原作の作品なんです。そのようなご縁もあって、ここでこうして出会えたのではないかと思います」と、大谷との不思議な縁を感じていた。さらに大谷の本作についての質問についてリュ監督は「大谷さんにこのように映画をしっかりと楽しんでみていただいて光栄」だと笑顔を見せつつ、本作の続きの物語の構想としてチョ・インソン演じるクォン軍曹のストーリーを内部的には持っていると明かす場面も。
そして舞台挨拶の最後には、チョンが「こうして映画が好きな観客の皆さんと劇場でお会いできることが、本当に僕にとって一番嬉しいこと。この夏にぴったりの映画ではないかと思いますし、韓国もそうですが日本もとても蒸し暑いですよね。なので暑い夏を、この作品を観て皆さん涼しく過ごしていただけたらうれしいです」とメッセージをおくり、リュ監督も「周囲のありとあらゆる家族親戚、友達にも宣伝口コミをしていただいて(笑)、映画をたくさん観ていただけるようにしてくだされば」と呼びかけた。
取材・文/富塚沙羅