未曾有の大災害から1年、その後を描いた映画と共に3月11日を振り返る
甚大な被害をもたらした東日本大震災から、ちょうど1年が過ぎようとしている。振り返ってみれば、震災は日本映画界にも多大な影響を及ぼした。まず、東北を中心に各地の映画館が閉館・休館を余儀なくされ、電力不足により営業を短縮する動きも各地で見られた。現在は大半の劇場が上映を再開しているが、一方で復旧不能で閉館に至ってしまった劇場もある。
また、震災直後は自粛ムードも漂い、クリント・イーストウッド監督『ヒア アフター』(11)が大津波のシーンがあることから上映が中止に。公開を控えていた歴史大作の『のぼうの城』(今秋公開)や中国の感動大作『唐山大地震 想い続けた32年』(公開未定)など、多くの作品が公開延期や中止となってしまった。
そんな様々なことがあったが、最も大きく変わったのは、やはり作り手たちの意識ではないだろうか。震災前後に撮影を行っていた監督らは大半が口をそろえて「映画なんかを作っている場合なのか自問した」と語り、実際に、園子温監督は震災を受けて、最新作『ヒミズ』(公開中)の脚本を大きく変更。山田洋次監督もクランクイン直前だった新作『東京家族』(年内公開予定)を、震災を反映させた内容にするために制作延期を決めるなど、試行錯誤しながら震災の記憶を作品に刻みつけようとする試みは、3.11以後に製作された映画の随所で見受けられるようになった。
そして、フィクションよりも直截的に、作り手が震災をどう受け止めたのか映してしまうのが、ドキュメンタリーだ。震災から3ヶ月で公開された『無常素描』(11)は、淡々と被災地を撮影して報道の喧騒とは離れた静かな現状を届け、森達也ら4人の監督が被災地を記録し物議を醸した『311』(公開中)は、遺族を前にカメラを回し続けることの後ろめたさまで切り取った。一方、大災害を前に“自分には何ができるのか”と、誰もが考えたであろう問いへの答えの一つとして、岩井俊二監督が提示するのは『friends after 3.11【劇場版】』(3月10日公開)。岩井監督は、自身が宮城県出身だということもあり、昨年の震災には一際大きなショックを受けたそうだが、友人たちとの語らいを通じて、日本社会の未来について誠実に向き合ったプロセスを記録している。同じ震災を扱った映画でも、ここまで受け止め方が違う作品が登場し始めたのは興味深いだろう。
福島県で大規模なロケを行った『トテチータ・チキチータ』(3月10日公開)や、仙台ロケを敢行した中村義洋監督『ポテチ』(4月7日公開)など、震災後の東北でロケを行った作品も登場し、震災から半年にわたってほぼ途絶えていたハリウッドスターの来日も昨年末頃から回復傾向にあるなど、復興に向け徐々に明るさを取り戻しつつある。震災を通して日本に生きる人々が何を感じ、何を考えたのかを忘れないようにするため、そして後世に伝えていくためにも、作り手たちの挑戦はまだまだ続いていくはずだ。【トライワークス】