ウォルター・ピジョン
Capt. Thorndike
ヒトラーに銃を向けたハンターと、彼を狩り出そうとするゲシュタポの追跡を描いた本格サスペンスの一編。本作のあと「死刑執行人もまた死す」「恐怖省」「外套と短剣」と続く、フリッツ・ラング監督のナチスものの最初の作品。従来のアメリカ映画にないナチスのリアルなイメージを米国の大衆に与え、以後のプロパガンダ映画のあり方に大きな影響を与えた。原作はジョフリー・ハウスホールドの小説『Rogue Male』で、「男の敵」「駅馬車(1939)」などジョン・フォード作品でお馴染みのダドリー・ニコルズが脚色。監督は当初、そのフォードが予定されていたが彼が難色を示したため、36年に渡米後、「暗黒街の弾痕」「西部魂(1941)」などを撮っていたフリッツ・ラングが当たった。スタッフには、撮影に「わが谷は緑なりき」のアーサー・ミラー、音楽を同作のアルフレッド・ニューマンが手掛けるといった具合に当代の名匠が担当。主演はこの作品で評価され、先述の「わが谷は緑なりき」や「ミニヴァー夫人」に起用された名優ウォルター・ピジョン。対するは本作以外でもナチスの将校役を何度か演じた、「イヴの総て」で知られる悪役俳優ジョージ・サンダース。また紅一点として、本作を契機に「飾窓の女」『Scarlet Street』「扉の影の秘密」と以後も3本のラング作品でヒロインを務めるジョーン・ベネットをはじめ、ナチスの追跡者役で怪演を見せる、「駅馬車(1939)」の他ホラー作品への出演で知られるジョン・キャラダイン、さらに後年「ヘルハウス」などホラー作品でも名を挙げる子役時代のロディ・マクドウォールなど個性的な役者が脇を固める。
第二次大戦開戦直前のドイツ。世界的なハンターとして知られるソーンダイク大尉(ウォルター・ピジョン)は、深い森を忍んである別荘に近づき、バルコニーに現れた人影にライフル銃の照準を合わせた。標的は何とヒトラーだった。大尉にとっては照準器に獲物を捉えれば獲物を仕留めたのと同じことで、厳重な警備に刺激されたゲームに過ぎなかった。だがドイツ側は当然そうは受け取らず、警備兵に見つかった彼は連行される。ゲシュタポの担当官キーヴ=スミス(ジョージ・サンダース)は、大尉が英国政府の命令で暗殺を敢行したという供述書にサインするよう迫る。ドイツは大尉の名声を利用し宣戦布告の材料にしようとしたが、彼は断固として拒む。大尉は事故に見せかけて崖から突き落とされたが奇跡的に助かり、大がかりな捜索網を縫って港にたどり着く。彼は停泊中のイギリス行きのオランダ船に忍び込み、少年船員ヴァナー(ロディ・マクドウォール)に助けられる。大尉に逃げられたキーヴ=スミスは、その船に不気味な男ジョーンズ(ジョン・キャラダイン)を乗船させた。大尉がロンドンに上陸すると、ゲシュタポの配下の男たちが行動を開始した。彼は追われるうちに、とあるアパートのジェリーという女(ジョーン・ベネット)の部屋に隠れた。大尉はジェリーと共に、兄のリスボロウ卿の屋敷に向かう。卿の元へは既にドイツ大使やキーヴ=スミスの探りが入っており、ドイツからは引き渡し要求が出ていた。大尉はジェリーと屋敷を去り、追手をまきながらロンドンの街を逃げ回る。そのさなか、ジェリーが帽子のピンバッチを落とし、彼は彼女が選んだ矢の形をした新しいものを買ってプレゼントする。地下鉄に逃げ込んだ大尉は、トンネル奥深くまで追ってきたジョーンズと格闘の末、彼を感電死させた。新聞は地下鉄殺人を書き立て、大尉は警察からも追われる羽目に。彼はジェリーに、3週間後、ドーセットの郵便局に手紙を出してほしいと兄への伝言を託した。約束の時が来て、郵便局に現れた大尉は様子がおかしいのに気づき、手紙を掴んで洞窟の隠れ家に逃げ帰る。手紙はキーヴ=スミスからのもので「これは本物の狩りだ」とあった。間もなく、キーヴ=スミスが現れてジェリーの帽子を差し出し、彼女が拷問で殺されたことを告げた。彼は大尉に降伏を迫る。大尉は彼女の帽子に付いていた、あのピンバッチと木の枝を利用して弓矢を作り、キーヴ=スミスを倒した。――しばらく後。戦争が始まり、ドイツ攻撃を志願した大尉は、単身パラシュ-トで敵地に降下した。今度は本当にヒトラーを撃つために。
Capt. Thorndike
Jerry
Quive-Smith
Mr. Jones
Vaner the Cabin Boy
Doctor
Lady Risborough
Lord Risborough
Capt. Jensen
Hitler
監督
脚本
原作
製作
撮影
音楽
美術
美術
編集
衣装デザイン
字幕
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