アンソニー・クイン
Kiril_Lakota
モーリス・L・ウェストの同名小説を、「慕情」のジョン・パトリックと「暴力のメロディー」のジェームズ・ケナウェイが脚色、「さらばベルリンの灯」のマイケル・アンダーソンが監督したローマ法王を主人公にした物語。撮影は「さらばベルリンの灯」のアーウィン・ヒリアー、音楽は「バージニア・ウルフなんかこわくない」のアレックス・ノースが担当した。出演は「25時」のアンソニー・クイン、「オセロ」のローレンス・オリヴィエ、「しのび逢い」のオスカー・ウェルナー、「グリーン・ベレー」のデイヴィッド・ジャンセンほか。製作は「戦争プロフェショナル」のジョージ・イングランド。
シベリア平原の強制労働キャンプ。政治犯として20年も囚われの身であったキリル(アンソニー・クイン)は、ソ連首相カメネフ(ローレンス・オリヴィエ)から釈放された。2人はかつて信仰をめぐって対立していたが今では深い理解と尊敬の念が芽生えていた。しかしながらカメネフがキリルを釈放したのは、もっと深い政治的な計算が働いていた。原因は中国だった。中国はひどい飢饉に悩まされ、首席ペングは隣接の穀倉地帯、ビルマ、タイ、北ベトナムなどへの侵入を決意していた。これに対し、ソ連もアメリカも戦時体制をしいた。いま中国の企てを阻止しなければ世界平和は壊れる。そこでカメネフは、8億の心を握るローマ法王庁に目をつけ、ウクライナ生まれの誠実な男キリルをローマに送り込もうと考え釈放を以て、法王庁と取り引きしたのだ。キリルはかつてルフォフ大司教をしていた男。彼を迎えにテルモンド(オスカー・ウェルナー)が来た。テルモンドは長年東洋で聖職についていたが、その言動が同僚の間で問題になり、司教委員会の訊問を受けることになっていた。だがキリルは、ローマに着いてからも、テルモンドと親交を結び、第一の相談相手にしていた。その頃、法王他界の悲報がもたらされた。新しい法王を選ぶため、何度も投票が繰り返されたが、容易には決定しない。漁夫ペトロの靴をはく人を見つけ出すことは至難のわざだ。その時バチカンの国務長官リナルディ枢機卿(ヴィットリオ・デ・シーカ)はキリルの謙虚さと勇気にうたれ、彼を推せんし、ほかの枢機卿もつぎつぎに同意した。そしてキリル一世が誕生。イタリア人でない法王は400年ぶりのことだった。彼は世界の平和を保つため、カメネフと一緒に中国にペング首席との会談を承知した。ペングは、中国を餓死に追いこもうとする米ソの封じ込み作戦を痛烈に避難し、法王が中国のために何が出来るかと批判した。会談から帰ったキリルはテルモンドの心臓発作にあい、唯一の相談相手を失った。テルモンドは査問会にかけられ進歩的な言動をつつしむようにと、いわれていたが、キリルだけは彼を高く買っていたのだ。やがてキリルは枢機卿たちに考えぬいた重大決意を語った。それはバチカンが持つ、すべての財産を地上の飢えた人々の救済にあて、世界平和に尽力することであった。これは三者会談で約束した中国のペングへの回答でもあった。
Kiril_Lakota
Kamenev
David_Telemond
George_Faber
Cardinal_Rinaldi
Cardinal_Leone
The_Elder_Pope
Dr._Ruth_Faber
[c]キネマ旬報社