イレーネ・パパス
Clytemnestre
トロイア戦争のさなかに、薄幸の運命をたどる王女イフゲニアの悲劇を軸に、戦争の無慈悲さ、愛憎の葛藤といった人間の宿業を描く。マイケル・カコヤニス監督がエウリピデスの悲劇『アウリスのイフゲニア』を映画化したもので、「エレクトラ」(61)「トロイアの女」(71)に続くエウリピデス三部作の完結編に当たる。製作はヤヌーラ・ウェークフィールド。脚本・台詞はカコヤニス自身が担当し、「女の叫び」のヨルゴス・アルヴァニティスが撮影を、「トロイアの女」のミキス・テオドラキスが音楽を、「女の叫び」のディオニシス・フォトプーロスが美術・衣装を手掛けている。出演は「エレクトラ」「トロイアの女」にも出ているイレーネ・パパスの他、200人の中から選ばれた13歳のタチアナ・パパモスクー、舞台俳優のコスタ・カザコス、コスタ・カラスなど。
トロイアの王子パリスによって、スパルタの王メネラオス(コスタ・カラス)は妻のヘレネーを奪われた。ギリシアの国々は名誉にかけて彼女を奪回しようと、一斉に兵を出した。イロイア戦争の始まりである。メネラオスの兄でアルゴスの王アガメムノン(コスタ・カザコス)は総大将として、数百隻の軍船をアウリスの浜に勢ぞろいさせた。しかし、何日も風が吹かず、船を出すことができなかった。不隠な空気が浜にただよう。ある夜、女神アルテミスの神託が予言者カルカス(D・アロニス)によってもたらされた。なんと風を吹かせるために、犠牲(いけにえ)として長女イフゲニア(タチアナ・パパモスクー)をアルテミスに捧げよというのである。最愛の子を捧げるのは、なんとしても忍びない。しかし、ギリシア連合軍の指揮官として私情を捨てて、故郷の妻クリュタイムネストラ(イレーネ・パパス)に手紙を書く。イフゲニアと美丈夫として誉れ高きアキレウス(P・ミカロプーロス)との婚儀がととのったから、娘をアウリスに来させるようにと。メネラオスはなおもためらう兄を責め、悩める兄との争いは果てしなく続く。やがて、イフゲニアとともに妻が末の子のオレステス(G・ヴールヴァカキス)を連れてやって来た。こっそりイフゲニアを帰そうにも、カルカスが黙っているはずはない。彼は先鋭の将オデュッセウス(C・ツァガス)と意を通じている。もし我が子を助けるために戦いを避ければ、彼はアガメムノンの裏切りを叫んで反乱に立つに違いない。血気にはやる兵士たちはオデュッセウスを将と仰ぎ、アガメムノン一族を滅ぼすだろう。まさに絶対絶命の窮地であった。アウリスについたイフゲニアを抱くアガメムノンの頬一筋の涙が流れる。彼は戦いの場に妻は無用と説いて、帰国を命じる。しかし、娘の婚儀を見とどけるまではと夫の命に従わなかったクリュタイムネストラは、たまたま出合ったアキレウスから「結婚の話など聞いていない」と聞かされた。アキレウスも驚き、怒る。その足でアガメムノンの許に駆けつけようとするアキレウスを、アガメムノンの老召使(A・ヤヌーリス)が押しとどめ、理由を説明する。あまりの事にクリュタイムネストラは、我を忘れて叫ぶ。その絶叫を通り掛かったイフゲニアが聞く。自分の運命を始めて知った彼女は逃げ出そうとする。しかし、戦いへと向かう奔流は、そんなささやかな抵抗はこともなくのみ込んでしまう。アルテミスの神託はいつしか兵士たちの知るところとなり、熱狂した彼らは歓声をあげて犠牲の儀式を待ちのぞむ。イフゲニアに同情したアキレウスは、ただ一人敢然と立ち向かうが、興奮した部下たちは、かつての主人に石を投げる始末。「犠牲を、犠牲を」、兵土たちの大合唱がアウリスをおおった。イフゲニアは犠牲のために台に連れていかれる。
Clytemnestre
Iphigenie
Agamemnon
Menelas
Ulysse (Odysseus)
Achille
Old Servant
Calchas
Oreste
監督、脚本、編集、台詞
原作
製作
撮影
音楽
美術、衣装デザイン
編集
字幕
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