ジョー・スチュワードソン
Will Maddox
勝利者の道を歩んできた父親とその子供たちの生き方を描く。製作・脚本はエミール・ノファル、監督はエミール・ノファルとロイ・サージャントの共同、音楽はロビン・ネッチャーが担当。出演はジョー・スチュワードソン、リチャード・ローリング、マリー・デュ・トワ、トニー・ジェイ、マドレーヌ・アッシャー、ジョン・ヒギンズ、ケン・リーチなど。
ウィル・マドックス(ジョー・スチュワードソン)は、苦難の末自らをたたきあげて現在の成功を築き上げた男だ。三十年前、オリンピックのマラソン・ランナーとして金メダルを獲得し、事業面でもマドックス建設の社長として、文字どおりマドックス帝国に君臨していた。彼には妻フラン(マリー・デュ・トワ)の間に四人の子供がおり、三人の息子たちはマドックス建設の後継者として父親の仕事を手伝うと同時、有能なスポーツマンでもあった。長男のトニー(ケン・リーチ)はレース・ドライバー、次男のポール(リチャード・ローリング)は短距離ランナー、三男のバリー(ジョン・ヒギンズ)はマラソン・ランナーであり、末娘のサンドラ(J・メイヤー)は水泳選手、彼らの母もかつてオリンピックの馬術の選手というスポーツ一家だった。マドックスのスモットーは、絶対負けてはならないということだった。なぜなら、“マドックス”という名は負けを知らぬ勝利者の名でなければならなかったからだ。だが、近頃では子供たちは父の大きすぎる期待に耐えられなくなっていた。このままでは自分の自由はなく、単なる父のあやつり人形にすぎないからだ。ある日、トニーが美しい娘ジリアン(マドレーヌ・アッシャー)を婚約者として連れてきた。だが彼女が酒場の歌手で離婚歴があり娘も一人いることを知ると、ウィルは激怒して反対した。そのために、トニーはジリアンの後を追ってマドックス家を出た。次男のポールもマドックス建設に縛られていることが耐えられず家を出た。その頃トニーはレース途中で大事故をおこし、下半身不随の体になってしまった。上の息子二人を失ったウィルは、三男のバリーと末娘のサンドラに全ての期待をかけた。そのサンドラが水泳の選手権に出場したが、優勝できなかった。涙にくれる彼女を慰めながら、フランはウィルにいった。“もし娘をとがめたら、私も娘と出ていきます”。ウィルに残されたのはバリーだけだったが、そのバリーも建築現場のエレベーターの事故で死んでしまった。全ての夢が破れ、家族を失ったウィルは人生の何たるかをやっと理解した。愛と幸せは金では買えないものだ、と。マドックス・マラソンの日がやってきた。しかし、マドックス家から出場する者はなかった。ウィルは自ら出場することにした。相棒のネィティ(T・ジェイ)の制止も聞き入れなかった。そのとき、スタート・ラインに立つウィルの眼にポールの姿が飛び込んできた。長いレースの途中、体力の限界を悟ったウィルは、ついにポールのリード・ランナーをつとめ始めた。ウィルは、ポールをはげましながら走った。そして、これこそ息子に対する父親のつとめだと思った。ついにポールは優勝した。ゴール寸前で転倒しながらも、ウィルも完走した。観衆の中に妻と娘がいた。やっと歩けるようになったトニーもいた。
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