マドビ・ムカージー
Arati
銀行員一家の貧しい生活を通して、夫婦の共稼ぎに対する違和感を描く。製作はR・D・バンサル、原作はレナンドラナート・ミットロ、脚本・監督・音楽はショトジット・ライ、撮影はスブラタ・ミットラ、美術はボンシ・チャンドログプタが各々担当。出演はマドビ・ムカージー、アニル・チャタージー、ハラドン・バナージー、ハレン・チャタージーなど。2015年9月12日「ビッグ・シティ」の邦題でデジタルリマスター版リバイバル公開。
一九五三年、カルカッタ。ニュー・バーラット銀行のしがない行員であるシュブラト・ムジャンダー(ハレン・チャタージー)は途方に暮れていた。妹のバニの授業料は二ヵ月たまっており、元校長だった父親のプリヤゴパル(ハラドン・バナージー)は老眼鏡が必要だといい、母親は十日ごとにカギタバコを買わなければならない。こう出費が重なっては、一ヵ月二五〇ルピーという薄給の身ではどうしようもない。夫の友人が夫婦共稼ぎをしていることを知った妻アラチ(マドビ・ムカージー)は働きに出る気になった。求職先も決まったが、これを知った父親は驚いて大反対した。シュブラトが時勢が変わったと説得しても受け入れなかった。しかし、アラチはやがて勤めに出るようになった。上流家庭を訪問してまわる編物機の外交販売だ。月給はわずか一〇〇ルピーでも仕事はけっこう楽しかったし、英国人二世の若い女性エディスとは特に親しくなった。一方、父親は彼なりに金を得る道を考え出した。昔の教え子の中から名を成した人を訪ねあて、謝恩金をせびることにしたのである。老眼鏡も眼科医となっている教え子に無料で作ってもらった。アラチの会社の社長ムカジー(ハレン・チャタージー)はなかなかの切れ者で、アラチがすっかり気に入り月給の他に売り上げの歩合も出すようになった。おかげで家計は楽になったが、シュブラトは夫としての立場上、面白くなかった。家庭以外のことにも急に興味をもち始め身なりも派手になり、子供のピントゥも病気のとき母がいないのを淋しがった。彼は友人にアルバイトの口を頼み、妻に勤めをやめるように宣告した。翌日、アラチは辞職届けを持って、重い足どりで会社に向かった。しかし、それを提出する前にシュブラトから電話がかかってきた。銀行が閉鎖になり失職したから仕事をやめないでくれという。この日から、アラチは一家のただ一人の稼ぎ手となった。さらに不幸は続いた。父親が階段から落ちて家にかつぎ込まれたのだ。だが、アラチの仕事ぶりを気にいっていたムカジーは、失業中のシュブラトにも会社で働くようすすめてくれた。折りも折り、前からムカジーに気に入られていなかったエディスが突然クビにされた。高熱で欠勤し、顧客との約束を破ったのを、仕事不熱心と断定されたのである。泣き悲しむ親友のコディスにすっかり同情したアラチは、ムカジーの措置に憤慨して、何のためらいもなく辞職届けをたたきつけた。彼女からこのことを聞いて、シュブラトは妻の勇気に驚いた。しがない銀行員だった彼にはとうていできないことだった。彼は妻をたしなめるどころか、正しいと信ずることを通す勇気を讃えたが、さてこれから先、一家はどうやって暮らしていくのだろう。
Arati
Subrata
Priyogopal
Edith
Mr. Mukherjee
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