ジャンカルロ・ジャンニーニ
Gennarino
男と女の愛と性の極限を地中海の孤島を舞台に描く。製作はロマノ・カルダレッリ、監督は日本初登場のイタリアの女流監督リナ・ウェルトミューラーで脚本も彼女自身のオリジナル、撮影はエンニオ・グァルニエリ、音楽はピエロ・ピッチオーニ、編集はフランコ・フラティチェリ。
地中海の華麗な8月の海を一艘のヨットが走っていた。このヨットに乗っているブルジョア仲間の一人、実業家夫人のラファエラ(M・メラート)はビキニ姿で太陽を浴びながら、召使いのジェナリーノ(G・ジャンニーニ)のシャツの匂いが臭いと文句をいったり、仲間たちと時局問題について、とりとめなくしゃべりまくっていた。そんなある日、彼女はヨットからはなれた洞窟で泳ぎたいと言い出し、ジェナリーノに命じて二人だけでモーター・ボートで沖に向かった。しかし、ボートのモーターが故障し、海上をさまよったあげく無人島にたどりつく。ジェナリーノは、さっそく小屋を作り自給自足の生活を始めるが、こうなるともはやラファエラの召使いではなかった。料理も洗濯も、魚をとることもできないブルジョア育ちのラファエラは、伊勢エビなどをとって料理しているジェナリーノのまえでは、まったくの無力だった。この時とばかりにジェナリーノの屈辱と怨みが一度に爆発し、ラファエラに“ご主人さま”と呼ばせ主従の立場はまったく逆転する。原始社会に帰ったようなこの世界では、男は本来の野性の姿をあらわし、ラファエラも、いつしかジェナリーノのたくましい男の魅力にひきつけられていった。ジェナリーノはラファエラに欲求不満をぶつけ、殴る蹴るの暴力でいためつけ、ついには砂丘で彼女の肉体を奪う。ラファエラはその性の快楽に、いまだかって経験したことのない強烈なものを感じた。彼女は高慢なブルジョア女ではなく“女”そのものとなって征服される喜びにひたっていたのだ。それ以来、野性に帰った男と女の本能におもむくままの愛の生活が始まった。しかしそんなある日、行方不明となった二人を捜し求めるヨットが沖を通りかかり、同時に二人の目の中に飛びこんできた。ラファエラはジェナリーノに、このままの生活を続けるために見すごそうと主張するが、ジェナリーノは二人の愛を確かめ合うためにも一度ヨットにもどり、また島へ帰って暮そうと言って救出を求めるのだった。ヨットに助けられた二人には陰鬱な文明社会が待ち受けていた。ラファエラには実業家の夫との退屈な生活、ジェナリーノには労働者階級の貧しい妻子のいる家庭……。ジェナリーノは、ラファエラの夫から妻をよく守ったと感謝され、大金を贈られる。屈辱的なことだったがその金をすべて投じて指輪を買い、彼女に贈り、島へ脱出するため、港で待つことを伝えるジェナリーノ。だが約束の時間、ラファエラは港には現われず、夫と共に豪華なヘリコプターでミラノへ帰っていった。二人の新しい世界を夢みたジェナリーノは現実にひき戻され、すごすごと妻の後から家路に向かうのだった。
Gennarino
Raffaella
Corradone
Turi
Tori
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