フェルナンド・レイ
Joseph
パリのとあるごくありふれたホテルに行き交う人々の出会いと別れ、ささやかな喜びと悲しみを描く。製作はサイモン・ペリー、監督・脚本は女流監督のヤナ・ボコーワで本作品が日本公開第一作にあたる。撮影・照明はジェラール・デ・バティスタ、音楽はロドルフォ・メデロスが担当。出演はフェルナンド・レイ、ベランジェール・ボンヴォワザンほか。
パリなら何の変哲もない、あたりまえの小ホテル「ホテル・ド・パラディ」に滞在している人々--ジョセフ・ゴールドマン(フェルナンド・レイ)は、第二次世界大戦時にパリでナチズムの暴力に巻き込まれた体験をもつロシア系ユダヤ人の老俳優。今や国際俳優として名声を確立し、晩年にもう一華咲かせたいという願いを抱いている彼のもとに、折しもパリのカフェ・テアトルで独り芝居をやってみないかというプロデューサーが現われ、ジョセフにとって忘れ難い、希望と挫折、絶望と歓喜、諦めと幸福、失意と夢の、いわば“愛と憎しみ”のパリへ再びやって来ることになったのである。彼の妹で、マネージャー兼付人のサラ(キャロラ・レニエ)は、兄とパリとの関係を「必要としていないのに来てしまった」と表現している。アルチュール(ファブリス・ルキーニ)は、映画監督たらんとする青年。実は隣りのアパルトマンに住んでいるのだが、しょっ中このホテルに入りびたっている。フレデリック(ベランジェール・ポンヴォワザン)は、美人女性フォトグラファーで、恋人との葛藤に疲れこのホテルにやって来た。男をひきつける魅力にあふれ、やたら口説かれることになる。モーリス(ユーグ・ケステル)は、ジョセフの独り芝居を企画したカフェ・テアトルのプランナー。この店の女性オーナーとは情人の関係にあるらしい。そして「ホテル・ド・パリ」の女主人マリカ(マリカ・リヴェラ)。さて、カミュの「転落」の独り芝居に取り組むジョセフだが、練習に打ち込めば打ち込むほど彼の心は空しさを覚えるようになった。自分を育て、自分を裏切ったこのパリで、今また晩年に新しい夢を見ようとしている自分が哀れで滑稽に思えてきたのだった。突然、衝動に駆られて、一晩彼は失踪するが、公演を間近に控え関係者は動揺し、モーリスはジョセフを怒鳴る。その後、全てを放りだしたジョセフは、パリの北にある駅の近くのキャフェでコニャックを飲みながら、そこに住む人々同様、またも失意のうちにパリを視つめるのだった。
Joseph
Arthur
Frederique
Maurice
Marika
Sarah
Emilio
English Producer
Dr. Jacob
Sheila
[c]キネマ旬報社