ナタリー・ドロン
Diana
深くデリケートな姉妹の愛の世界……傷つき散った耽美の花。製作はアレッサンドロ・フレイ、監督はこの作品でデビューのロベルト・マレノッティ。脚本は「81/2」のブルネロ・ロンディとロベルト・マレノッティの共作。撮影はジュリオ・アルボニコ、音楽は「夜」のジョルジョ・ガスリーニが担当。出演は「個人教授」のナタリー・ドロン、「暗殺」のスーザン・ストラスバーグ、「テオレマ」のマッシモ・ジロッティ、ほかにジャンカルロ・ジャンニーニなど。テクニカラー、テクニスコープ
結婚のため、最愛の妹マルタ(S・ストラスバーグ)がディアナ(N・ドロン)のもとを去ってから、二年の歳月が過ぎていった。ディアナは国際会議の同時通訳者。その美貌と知性は、同性をもひきつけずにはおかなかった。ある日、そのディアナに、マルタを訪れる機会がやってきた。その喜びに、彼女は仕事など意味のないことのように思うのだった。結婚したマルタは、郊外の大邸宅に住んでいた。典型的ブルジョワである夫アレクス(M・ジロッティ)の父親のような愛に包まれて……。再会の喜びに抱き合う二人だったが、その夜、ディアナは夫婦の激しい触れあいを見て、マルタを想う心が動揺するのだった。翌日、アレクスの従弟でカメラマンのダリオ(G・ジャンニーニ)が遊びに来て、ディアナへの感心を示したが、彼女はとりあわなかった。その夜のパーティで、ディアナはアレクスが性的不能者であることを知り、昨夜の行為の不可解性に思いを馳せた。だが、マルタはディアナとの甘美な想い出から逃れるため、いま激しく荒々しい性を求めていた。森番の男との関係も、そのあらわれであった。ディアナがマルタによせた儚い思慕も、いまや完全に裏切られていた。やがてディアナとマルタの微妙な絆に気づいたアレクスは、ダリオをつれて旅に出た。男二人が去った後、女二人のおさえていた感情があふれ出し、背中あわせの愛と憎しみの言葉が交錯した。そのうち自分の本当の心に気づきはじめたマルタは、バスに身を沈め姉に甘え始めた。しかし、ディアナの瞳には、その時、哀しくも華麗なひとつの殺意がひらめいていた。翌日、いつもマルタに、青いバラを二輪とどけに来る少年が、やってきた。だがもう、その人工の花を受けとるにふさわしいたったひとりの人は、いなかった。アレクスが旅行から戻ると、うつろな眼でディアナが庭に佇んでいた。彼はすべてを察したようであった。晩秋の透きとおるような陽光が、芝生に長い影を落していた。
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