アンナ・カリーナ
Paula
仏内務省直属の秘密警察とギャング組織の、つながりと機構を一挙に露出して、仏、モロッコ両政府を揺るがす暗黒事件となった《ベン・メルカ事件》を素材に、架空の都市で謎の死をとげた愛人の死因を調べる女事件記者が刑事やギャングにまとわりつかれる。そして、暴力と殺戮と政治の世界が展開される架空の劇に彼女は如何にして解決をつけるか?製作はローマ-パリ・フィルムのジョルジュ・ド・ボールガール、監督・脚本は「カラビニエ」のジャン・リュック・ゴダール、原作はリチャード・スタークの小説“ザ・ジャガー”、撮影は「カラビニエ」のラウール・クタール、音楽はベートーヴェンとロベルト・シューマンから、またマルアンヌ・フェイスフルが自身で出演してローリング・ストーンズの“As tears go by”を歌う。編集はアニエス・ギュモが各々担当。出演は「アルファヴィル」のアンナ・カリーナ、ラズ口・サボ、「夜霧の恋人たち」のジャン・ピエール・レオー、その他イヴ・アルフォンソ、ジャン・クロード・ブイヨン、小坂恭子、マリアンヌ・フェイスフル、エルネスト・メンジェル、声だけのゴダールなど。イーストマンカラー・テクニスコープ。
“気狂いピエロ”のラスト・シーンのテーマ音楽とともにこの映画は始まり、舞台はレイモンド・チャンドラーの架空都市アトランチック・シティーで、時は“今から二年後”。かつての愛人リシャール・ポ……(J・R・ゴダールの声)から電報を受けてポーラ(A・カリーナ)はこの街に着く。が、直前に彼は謎の死をとげている。死因は心臓マヒと言うが……。以前、モロッコ戦争をめぐって暗躍したスパイや殺し屋がリシャールの死をめぐって動き出し、彼女にまといつく。情報屋のチフス菌(E・メンジェル)、その甥の詩人デビッド(Y・アルフォンソ)、その婚約者溝口(小坂恭子)や検死医者、失踪した女秘書、言語学の酒場の主人……。そして地区の元締のR・ウィドマーク(L・サボ)や輩下のドナルド・ダック(J・P・レオ)は、ポーラの行動を監視し続ける。彼女の身辺を守るのは《ラルース美食百科辞典》にしのばせた一挺の拳銃のみ。第二、第三の殺人が起き、チフスが謎の死をとげ、溝口も殺される。パリ警察からアルドリッチ刑事(J・C・ブイヨン)が捜査に乗り込んで来た頃、ポーラは事件の核心をつかむ。リシャールはかつてトップ屋をしていた週刊誌の論説主幹だったが、同時に党の指導グループに属し、隠然たる力の手により抹殺されたのだ。それはアトランチック市の暗殺された前市長が歩んだと同じ迷路の果てにおいてであり、今やポーラにも同じ運命が持っていた。暴力と殺戮とあやつり人形の世界。血塗られたディズニー映画の世界。それはまさしく政治映画の世界。リシャールの死の原因を求める事は、自分で失くした世界を取り戻すための、ポーラの生きる理由を探る事でもあったのだ。リシャールを殺ったのはダックとウィドマークと分った。彼女は、デビッドの手をかりて解決をつける。時はまさしく左翼零年。架空の劇に終止符を射て!
Paula
Widmark
Donald
David
Aldrich
Mizoguti
Herself
Typhus
Voice of Richard Politzer
監督、脚本
原作
製作
撮影
音楽
音楽
編集
[c]キネマ旬報社