小さな目撃者(1971)

悪戯盛りのジギー（Ｍ・レスター）は十一歳。燦燦と降り注ぐ太陽の下、透徹るようなブルーの地中海に浮ぶ島で、灯台守りの祖父アームストロングじいさん（Ｌ・ジェフリーズ）と姉のピッパ（Ｓ・ジョージ）そして家政婦（Ｂ・マースドン）の四人で暮らしている。ジギーには、空想癖があって、これにはしばしば皆が困らされてしまう。ある日、この島に来た外国の大統領の歓迎パレードに出かけたジギーと姉のピッパは、群衆にもまれながら、大統領を一目見ようと悪戦苦闘していた。ジギーは、見物の特等席を得ようとして、警備の目をかすめ、近くのビルに入りこんだ。大統領が車に乗って、広場に入ってきた。その時、突然銃声が響いて、大統領は前にのめった。驚いたジギーの目に、隣りの部屋が映った。中を覗いたジギーは二度ビックリしてしまった。一人の太った警官が、銃をかまえていたのだ。あわてて部屋を出ようとしたジギーは、男とバッタリ顔をあわせてしまった。男の恐ろしい目を見て、体まで震えてきたジギーは無我夢中で逃げだした。騒然とした広場では、ピッパは、迷子になった弟を必死に捜し回っていた。彼女の可愛さに目をつけた旅行者のトム（Ｔ・ボンナー）は気の動転しているピッパに、協力を申し出た。やっとの思いで逃げてきたジギーは、偶然、姉とトムの車に出会い、怒り、わめくピッパに、一部始終を一気に話した。が、あまりの唐突さに、また例の空想癖がでたと思ったピッパは、まるで相手にしなかった。暗殺事件の際、大統領の車に同乗していて、危うく助かったガレリア警視は、犯人逮捕に全力をあげていた。一方、犯人たち、太った警官グラチニ（Ｐ・ボーガン）共犯者ビクター（Ｐ・ボーレス）は血まなこになってジギーを追っていた。夕方、家ではだれも信じてくれず、不安を感じたジギーは、女友達のアンマリーを訪ねて、アンマリーを通して警察へ訴えることにした。分署へ走ったアンマリーは、相手にされずに、うまく送り出されてしまった。外に出た時、ちょうどやって来たのが、グラチニとビクターで、署長に送り届けることを命ぜられた二人に、アンマリーは無邪気に話し始めた。ジギーのことまで何もかもしゃべるアンマリーを二人の異様な光る目が瞶めていた。家でアンマリーの帰りを待っていたジギーは、ジープからおりてきたグラチニを見て叫んだ。「アンマリー、逃げろ、その男が犯人だ!!」驚いて走りだしたアンマリーを、ビクターはいきなり射殺し、グラチニは逃げるジギーを追った。そのころ、ジギーの捜索願いを受けた、ガレリア警視は、次々に起る事件の共通点から、犯人割り出しのキッカケを掴もうとしていた。そして、その一致点は現場には必ず警察官が関連していると思いあたった。調査の結果、すぐに割り出された名前、グラチニは、以前、警視に兄をマフィア事件で射殺されており、その復讐の弾丸が、誤って大統領を殺したのだと解った。真実を知った祖父やピッパそしてトムは、要塞へ避難した。そこでは、ジギーが息を殺していた。犯人たちは執拗に追ってきて、今この外でジギーを待ちかまえているというのだ。祖父がランプで作った火炎ビンを犯人たちに向って投げつけ、やっと脱出して、車にとびのった三人は、必死に走った。夜明けに、ついに追いつかれた三人の車は、グラチニの車の体当りをくい、ひとたまりもなく、ひっくりかえってしまった。血まみれのジギー、ピッパ、トムの三人は絶体絶命、あわやグラチニのエジキと思われた時、アームストロングじいさんが駆けつけ、続いてパトカーも到着。必死に迎え撃とうとしたグラチニはアームストロングじいさんの銃弾を浴び、ジープもろとも崖から、まっさかさまに落ちて行った。