デルフィーヌ・セイリグ
Helene
心地よい小さな幸福に対する皮肉がこめられた、“幸福の文明”とでも名づけられる一種の不快をしみこませたアラン・レネ監督作品。製作はアナトール・ドーマン。脚本・台詞は、「黒人の女」の作者でレネの短篇「夜と霧」にも協力したジャン・ケイロル、撮影はサッシャ・ヴィエルニー、音楽はハンス・ヴェルナー・ヘンツェが各々担当。出演はデルフィーヌ・セイリグ、ジャン・ピエール・ケリアン、ニタ・クライン、ジャン・バチスト・チェレ、クロード・サンヴァル、マルティーヌ・ヴァテルなど。
エレーヌ・オーガン(デルフィーヌ・セイリグ)は未亡人で、養子のベルナール(ジャン・バチスト・チェレ)との二人暮しで、ドーヴァー海峡に面した町ブローニュに住んでいた。平穏だが孤独な毎日の生活をおくるエレーヌは、ある日、かつての恋人アルフォンス(ジャン・ピエール・ケリアン)に会いたい衝動にかられ、彼の居所を探しあてて手紙を書いた。アルフォンスはエレーヌが十六歳のときの初恋の相手だったが、第二次世界大戦の勃発によって、二人はひきさかれた。現在、バーのマネージャーをやりながらこれといってあてがなかったアルフォンスは、エレーヌの手紙を受け取ると、姪だという若い女フランソワーズ(N・クライン)を連れて彼女の家にやってきた。実は、フランソワーズはアルフォンスの情婦だった。エレーヌの強い希望で、二人はその日から彼女の家で暮すことになった。エレーヌは、情夫のド・スモーク(クロード・サンヴァル)の手引きで骨董店を経営している。息子のベルナールはアルジェリア戦争から帰還して以来、“ミュリエル”についての悲しい思い出のために打ちひしがれており、恋人のマリー・ドウー(M・ヴァテル)の傍にいるときだけ、わずかに心の安らぎを見出していた。アルフォンスとの再会に、エレーヌは何を求めたのだろうか? 彼を再びわがものにすることか、自分の生活を引きしめることか、それとも現在の生活から脱出しようとしたのか--彼女自身にも判らなかった。それは、アルフォンスがなぜ彼女のところへやってきたのかが判らないのと同じことだった。二週間という間、エレーヌは客たちをもてなしながら、情夫のド・スモークと会い、友人たちを招き、カジノに通う金策に神経をすりへらしながら、彼女の生活を続けていた。一方、アルフォンスとフランソワーズ、ベルナールとマリー・ドウーらも、自分たちの生活を続け、家の外と内を行ききした。たまにお互いがぶつかり合うことはあっても、彼ら自身のドラマは何の結びつきもなく、まじわり合うだけだった。
Helene
Alphonse
Francoise
Bernard
De Smoke
Marie Do
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