タチヤナ・ドローニナ
Shura
ロシヤのステップに広がるソホーズ。そこに生きる人人の生活模様と母と子の愛情の機微を描いた長篇劇映画。監督はオレーグ・ボンダタフ、脚本はエドゥアルド・スミルノフとタチヤナ・ドローニナ、撮影はイーゴリ・チェルヌィフ、音楽はG・ポノマレンコが各々担当。出演はタチヤナ・ドローニナ、レオニード・ネヴェドムスキー、レーナ・コステレヴァ、ナジェージダ・フェドーソヴァなど。日本語版監修は野中重雄。カラー、ワイド。
シューラ・オレワンツェワ(T・ドローニナ)は、ソホーズの機械技師をしている夫パーヴェル(L・ネヴェドムスキー)と二人の子供たちに囲まれて穏やかで幸福な日々を送っている。夫は優秀な技師としてこの地区では名も知られていたし、一家はまもなく新しいアパートに移ることになっていて、彼女は充たされた生活をしていた。だが、そんな生活に突然、暗い影がさした。夫にきた一枚の手紙からであった。夫には昔の恋人との間に子供がいたのである。その子供が最近母親を亡くして孤児になってしまったという。夫は子供がいたことなど知らなかったといい張り、シューラは嫉妬心から夫をなじった。彼女は子供を引き取るべきかどうか迷った。この自分の家庭に“養子”を迎え入れることはとてもできそうになかった。“継母”という言葉が持つ響きを考えただけでも耐えられそうになかったのだ。だが夫の決意は固かった。シューラはついに夫と共にそのスヴェータ(L・コステレヴァ)という娘を引き取ることにした。母の死を体験したスヴェータは他の人となじもうとせず、黙りこくって小さな心を閉ざし、すっかり偏屈な子供になってしまっていた。実の父である夫のパーヴェルに対しても、彼女はかたくなに心を閉ざしつづける。こうしてスヴェータに“おかあさん”と呼ばれる日まで、シューラの母親としての苦しい闘いの日々が続いた……。
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