アラン・ドロン
Marc
敏腕弁護士と謎を秘めた暗い過去をもつ女の愛を描くサスペンス映画。製作はレイモン・ダノン。監督・脚本・台詞は「渚の果てにこの愛を」のジョルジュ・ロートネル、撮影はモーリス・フェルー、音楽はフィリップ・サルドが各々担当。出演はアラン・ドロン、ミレーユ・ダルク、クロード・ブラッスール、ニコレッタ・マキャヴェッリ、フィオーレ・アルトビティ、アンドレ・ファルコンなど。
冬の南仏、ニース。テレビ作家のフランソワ(クロード・ブラッスール)は、一人の不思議な女に出逢った。彼の子供じみた追求に負け、車の窓に電話番号を記して立ち去ったその女ペギイ(ミレーユ・ダルク)は、家族もなく、ひっそりと暮していた。ペギイをドライブに連れ出したフランソワは、次の約束もしないで門の中に去った彼女が、迎えに出た紳士にすがりつく姿を目撃して、心を乱さずにはいられなかった。嫉妬にかられたフランソワが、その紳士の正体を知ったのはそれから間もなくのことだった。豪華な邸宅に住む敏腕弁護士マルク・リルソン(アラン・ドロン)だ。“彼女は夫殺しだ。精神鑑定の結果、無罪になったが”。フランソワを招いて苦悩の色を滲ませながら語るマルクが席をはずしたとき、彼の弟ドニ(フィオーレ・アルトビティ)がフランソワに囁いた。“兄さんはあいつを愛しているんだ”。数日後、リルソン邸で開かれた華やかな晩餐会から帰ったペギイは、何を思ったのか庭師のアルベールの部屋に入り、寝ていた彼をおこした。おびえきったペギイからの電話をマルクが受けたのはそれからしばらくたってからだった。やがて彼女のもとに馳けつけたマルクは、首にハサミを突き立てられて死んでいるアルベールを発見したが、なぜか驚きもせず、死体を運び出した。その様子を物蔭からじっと見つめているドニ。翌日、アルベールの死体が発見され、マルクの家にガルニエ警部(A・ファルコン)が訪れた。“今度こそ、彼女は刑務所行きだぞ”。薬物中毒の後遺症で男性恐怖症にかかっているペギイは、どんなに愛していても肌に触れることは出来ない女なのだ。マルクのペギイへの愛が肉体を超え、限りなく深まっているのを警部は知っている。やがて第二の殺人事件が発生した。犠牲者はドニだった。ペギイと共にツリニ峠のハネムーンに旅立ったフランソワのあとを追うマルクの心は決まっていた。一方、ツリニ峠のホテルでは、フランソワに危機が迫っていた。裸のペギイの手に刃物が握られていたのだ。マルクが部屋に入ったのとフランソワが悲鳴をあげたのと、ほぼ同時だった。マルクはペギイを静かに抱きよせると、展望台へと連れだした。マルクの手には拳銃が握られていた。冷やかな空気をふるわせて、二発の銃声が響き渡った。
Marc
Peggy
Francois
Jacqueline
Denis
Garnier
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