マリア・シェル
Rose Bernd
ドイツ自然主義文学の代表者ゲルハルト・ハウプトマンの舞台劇『ローゼ・ベルント』より舞台脚本家のウォルター・ウルブリッヒが現代風に脚色、東ドイツ出身のヴォルフガング・シュタウテが監督した女の一生物語。撮影は西ドイツのクラウス・フォン・ラウテンフェルト、音楽は戦前ウーファの「美の祭典 オリンピア第2部」などを担当したヘルバート・ヴィント。主演は「最後の橋」のマリア・シェル、「愛は惜しみなく」のラフ・ヴァローネ、他にケーテ・ゴールト、レオポルド・ビベルティなど。
ローゼ・ベルント(マリア・シェル)は、西ドイツのある小村の名望家に働いていた。足腰の立たない主人の妻ヘンリエッテ(ケーテ・ゴールト)に献身的につくし、明るく勤勉で誰にも愛された。ローゼには以前から運転手のシュトレックマン(ラフ・ヴァローネ)が言い寄っていたが、ローゼは彼の動物的な荒々しさに惹かれる反面、反撥も感じており、主人のフラム(レオポルド・ビベルティ)を敬愛していた。が、或る日、誘惑しようと機会を狙っていたフラムに身を委せてしまった。しかしローゼには製本屋のカイルという許婚がいた。二年前に父が婚約させたが、シュトレックマンと対照的な気の弱い男のため、彼女は結婚をのびのびにしていたしカイルも強くおし通せる男でなかった。ヘンリエッテにかくしておくことに良心の苛責を覚えながらフラムとの関係を深めていったローゼは、やがて彼の子を宿した。フラムは堕すようすすめたが、彼女は母になる決心をして父の許へ帰った。しかし二人の仲を知ったシュトレックマンがそこまでやって来て、それをたねに脅した。ある夏の日、麦畑でローゼはとうとう彼の力に屈してしまった。ローゼは生活の安定を求めた。それにはカイルと結婚し、フラムの子を生むことだ。しかしそれもシュトレックマンが彼女の行状をあばいたためにぶちこわされた。怒ってシュトレックマンに飛びかかったカイルは、反対に片眼を失明した。娘の潔白を信じる父親は、名誉毀損でシュトレックマンを訴えたが、フラムの証言ですべてが明らかとなった。こうなった上は、裁判所の呼び出しにも応じない彼女に強制命令が来た。裁判所に出頭する途中、陣痛が始まったローゼは、汽車を降りて雪の中をさまよった挙句、鉄橋の下で赤ん坊を生み落した。冷酷な世間と、ふみはずした人生、ローゼにはすべてが絶望だった。だが、善良なカイルは、彼女の美点だけを愛し、彼女を救おうと考えた。ヘンリエッテの慰めの言葉にも耳をかさず、一人去って行くローゼを追うカイルの姿があった。
Rose Bernd
Arthur Streckmann
Henriette Flamm
Christoph Flamm
August Keil
Rose's Father
Maria Schubert
The Judge
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