ジェラール・ウーリー
Jacques
短篇映画出身の二九歳の仏新人監督エドゥアール・モリナロの処女作品。一九五七年フランス探偵小説大賞を得たフレデリック・ダールの原作小説、『私たちを禍から救ってくれ』にもとづいて製作されたサスペンス映画である。愛する妻に裏切られ男が、再び彼女を自分のもとに戻そうとして仕組んだトリックに、自繩自縛となっていくプロセスが描かれる。脚色は原作者ダール自身と、フランソワ・シャヴァヌ、ジャン・ルドンの三人の共同。台詞は同じくダール自身とJ・L・ロンコロニが執筆している。撮影は「リラの門」のロベール・ルフェーヴルが担当し、音楽はリシャール・コルニエ。「死刑台のエレベーター」のジャンヌ・モロー、「河の女」「男の世界」などで国際的に活躍しているジェラール・ウーリーが主演し、他に新人フィリップ・ニコー、クレール・モーリエ等が出演している。製作はフランソワ・シャヴァヌ。
深夜のパリで、ジャック(ジェラール・ウーリー)は一個の死体をコンクリート・ブロックを使って建築現場の塀の中に塗りこめた。妻のグロリア(ジャンヌ・モロー)のために。--話は三ヵ月以前にさかのぼる。少壮実業家のジャックは妻グロリアの不貞に気づいた。相手は、ノルマン(フィリップ・ニコー)という演劇志望の青年だった。苦しみ悩んだ末に、彼は妻をもう一度自分のもとにとりもどすために、一つのトリックを思いついた。事故死した部下の旅券を使って、彼の名でジャックは妻に脅迫状を送った。密通を夫に知られたくなかったら二十万フランを支払えと記して。しかし、彼女はこれをいたずらと見て黙殺した。次にジャックは、私立探偵モーバンを使って、妻とノルマンが会っている現場をとらえた証拠写真を撮り、それを同封して脅迫をつづけ、遂に要求金額も五十万フランにつり上げた。さすがにグロリアも夫である彼を偽り、一部の金を工面したが、ジャックは五十万フラン以下の金額の受取りを拒否した。グロリアとノルマンは、行きつけのバーの女ギレーヌを通じて、ぐれん達を傭って脅迫者をつきとめようとした。しかし、ジャックは逆にぐれん隊を金で味方につけてしまった。そして、さらに前にノルマンと関係をもっていたギレーヌをそそのかし、脅迫者は、実は妻の恋人であるノルマン自身なのだと妻に思いこませる工作を進めた。そして、グロリアがよこした金を、私立探偵モーバンを通じて、俳優として彼を傭うと称してノルマンに手渡させた。紙幣の番号を控えておいたグロリアは、それを恋人ノルマンのもとで発見して驚いた。そして拳銃でノルマンを射殺した。その死体を、ジャックは一人深夜に、塀の中に塗りこめたのだ。これで、トリックは完成した。しかし、グロリアが夫の手もとに脅迫者の名の旅券を発見したことから、総ての計画は計算が狂った。グロリアは、総てを知って、自殺することで過去の一切を清算した。自殺直前に警察に送ったグロリアの手紙が、ジャックを司直に渡した。塀は白日の下で、警察の手により死体をとり出すためにこわされた。ジャックはうつろな目でそれを見ていた。
監督
原作、台詞、脚色
製作、脚色
撮影
音楽
美術
台詞
脚色
字幕
[c]キネマ旬報社