ジャンヌ・モロー
Lidia
「情事」のミケランジェロ・アントニオーニとエンニオ・フライアーノ、トニーノ・グエッラが共同で脚本を執筆、アントニオーニが監督した夫婦の生活を描いたもので、ベルリン映画祭でグランプリを受賞している。撮影は、常にアントオーニと組んでいるジャンニ・ディ・ヴェナンツォで、音楽はイタリア・ジャズ界の鬼才といわれるジョルジョ・ガスリーニが担当している。出演者には「雨のしのび逢い(1960)」のジャンヌ・モロー、「甘い生活」のマルチェロ・マストロヤンニ、「情事」のモニカ・ヴィッティ、またドイツから「橋」の監督ベルンハルト・ヴィッキが参加している。
ある日の午後、作家のジョヴァンニ(マルチェロ・マストロヤンニ)と妻リディア(ジャンヌ・モロー)は、病床の友人トマゾを見舞った。トマゾの病気は回復の見込みがない。トマゾはジョヴァンニの親友である。がリディアにとっても親しい間柄だった。以前トマゾはリディアを愛したが、彼女はすでにジョヴァンニを愛し結婚していた。彼女は作家夫人として何不自由のない毎日を送っていたが、その生活に得体の知れぬ不安が徐々に広がっていった。結婚前二人を結びつけたはずの愛を見失ったと感じたとき、彼女の心にポッカリと一つの空洞があいた……。二人の乗った車は近代的なミラノの街をゆく。自動車は美しい建物の前へ止る。そこでジョヴァンニのサイン会が行われるのだ。リディアはひとりミラノの街を歩いた。幾何学的な白いコンクリートの直線。郊外のうらさびしい家並み。その荒涼とした風景は彼女の心をそのまま映したようだった。その夜、二人はゲラルディニのパーティーへ行った。会場でジョヴァンニは、ゲラルディニの娘バレンチナ(モニカ・ヴィッティ)に魅了された。彼の視線はたえず彼女を追った。一方リディアは病院へ電話しトマゾの死を知った。胸中で何かが音をたててくずれ落ちた。ポーチの隅で夫とバレンチナが接吻しているのを見ても、何の感情もわかなかった。朝になった。夜を別々に過した夫と妻に夜は何ももたらしはしなかった。二人は邸の広漠とした庭の一隅に座った。「トマゾが死んだわ」リディアはポツリと言った。それからトマゾと自分のことを……そして、結婚当時ジョヴァンニの書いた一通の手紙を読んだ。その愛はどこへいったのか。二人の間には冷々とした空間があるだけだ。ジョヴァンニは愛をとり戻そうとするかのようにリディアを激しく抱いた。リディアは、あえいで言った。「愛してないと言って……」「いや言わん」男と女の空虚な試みが続けられる。そして、今日もまた夜は明けていくのだった。
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