トマス・ミリアン
Martino
ウーゴ・ピッロの原作を「鞄を持った女」のレオ・ベンヴェヌーティとピエロ・デ・ベルナルディが共同でシナリオを執筆、「家族日誌」のヴァレリオ・ズルリーニが監督した人間ドラマ。撮影は「四次元の情事」のトニーノ・デリ・コリ、音楽は「鞄を持った女」のマリオ・ナシンベーネが担当した。出演は「太陽の誘惑」のトマス・ミリアン、「太陽がいっぱい」のマリー・ラフォレ、「女と男のいる舗道」のアンナ・カリーナ、「情事」のレア・マッサリ、「秘密大戦争」のマリオ・アドルフなど。一九六五年度モスクワ映画祭では特別金賞を受賞している。
第二次大戦下の一九四〇年、ギリシャ全土は山岳地帯にたてこもった一部のゲリラを除いて独伊両軍の占領下におかれた。休暇でアテネにいた歩兵中尉マルチーノ(T・ミリアン)は十二名の慰安婦をいくつかの部隊に運ぶという任務をうけた。アテネを発とうとするトラックに向って、慰安婦の一人トウーラ(L・マッサリ)の妹が、一人置き去りにされるのが不安だといって駆けよった。女達のこん願に負け、マルチーノは同行を黙認した。さらに途中で奥地に行くという黒シャツ隊の少佐を同乗させた。マルチーノはエフティキア(M・ラフォレ)という、無口な女に心を惹かれはじめていた。駐在所につくたびに、獣じみた夜を見なければならない。奥地に入るにしたがって、ギリシャ人のパルチザンが出現する危険な道を通らなければならなかった。そしてある日、いきなりパルチザンの銃撃にあった。女の一人エレニツァが胸に銃弾をうけ、一行はやっとの思いでレンガ造りの荒屋に逃げこんだ。もう一度襲われたら皆殺しだ。逃げなければならない。が、エレニツァは重態。不安な時間に極度に興奮した少佐はエレニツァを射殺した。エフティキアが怒って彼に銃を向けたが、マルチーノがとめた。少佐は「皆のためにやったんだ」と弱々しく弁解した。一行は徒歩で目的地オクリダに着いた。そこでは黒シャツ隊がゲリラ追放のために町に火を放ち少年までをも無造作に銃殺していた。少年の同胞エフティキアはその光景を見て初めて涙を流した。マルチーノは狂おしいほど彼女を愛していたが、両国の溝の中でどうすることも出来なかった。その日、二人は最後の夜を送った。彼女は翌日パルチザンの仲間に加わるために山に登り、マルチーノはそれ以後、二度と彼女に会うことはなかった。
Martino
Eftichia
Elenitza
Toula
Castalyoli
Eve
[c]キネマ旬報社