ローレンス・オリヴィエ
Othell
一九六四年四月、イギリス国立劇場の専属劇団ナショナル・シアターは、シェークスピア生誕四百年を記念して、オールド・ヴィック劇場で『オセロ』を上演した。この作品は、その舞台の映画化である。監督は、舞台・映画・TVに巾の広い活躍ぶりを見せている、スチュアート・バージ。(原舞台の演出はジョン・デクスター)撮影は「ベケット」のジェフリー・アンスワース、音楽はリチャード・ハンプトン、美術は「黄色いロールス・ロイス」のワィリアム・ケルナーが担当した。出演はすべてナショナル・シアターのメンバーで、リーダーのローレンス・オリヴィエをはじめ、マギー・スミス、フランク・フィンレイ、ジョイス・レッドマン、デレク・ジャコビなど。製作はアンソニー・ハヴェロック・アランとジョン・ブラボーン。
水の都べネチアで、知らぬ者とてない将軍オセロ(L・オリヴィエ)は、何ものをも怖れぬ勇気と高潔な人柄で、人々の信頼と尊敬の的だった。彼はアフリカ生まれのムーア人で、方々をさすらったあげく、ベニス公に仕えるようになったのである。高官の娘デズデモーナ(M・スミス)は、父の反対をおしきって彼に嫁ぎ、トルコ軍撃退の任務をおびてキプロス島に向かうオセロに同行した。オセロは、彼女を腹心の旗手イアーゴ(F・フィンレー)に託し、一足先きにキプロスへ出帆した。イアーゴは頭がよく度胸もあり、しかも誠実この上ない部下だと、オセロは深く信頼していた。しかし、イアーゴは内心、オセロを恨み憎んでいたのだ。自分をさしおいて後輩のカシオ(D・ジャコビ)を副官に抜てきしたこと、妻のエミリア(J・レッドマン)に手を出したと思える節があることなどを根にもち、オセロを苦しめ破滅させようと思っていたのだ。トルコの軍勢は時ならぬ嵐のために壊滅し、キプロス島でデズデモーナに再会したオセロは、祝宴をはった。その席でイアーゴは、デスデモーナに想いをよせているロダリーゴをそそのかし、カシオに喧嘩をふっかけさせた。案の定カシオは失脚した。次にイアーゴはデズデモーナとカシオが密通しているかのごとく、オセロに話した。心から妻を信じているオセロは、イアーゴの言葉をはじめは笑って打消した。しかし疑惑というものは、ひとたび芽生えると、たらまち大きくふくれあがるものだ。イアーゴは追いうらをかけるようにオセロに話した。デズデモーナが、かつてオセロから愛の証しにと贈られたハンカチをカシオにやってしまったと。実はデズデモーナが落したのをエミリアが拾ったのだが、その夜オセロは、身の潔白を口説く妻の言葉に耳もかさず絞め殺した。悲劇はまだ続いた。イアーゴの悪事に気づいたエミリアが暴露したのである。すべてがイアーゴの謀略であったと。オセロは隠し持った剣で、みずからののどを切り、妻の亡骸の上に折り重なって果てた。
Othell
Desdemona
Iago
Emilia
Cassio
Roderigo
Lodovico
Brabantio
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