ピーター・カッシング
Christopher Maitland
ロバート・ブロックの怪奇小説を、「テラー博士の恐怖」のミルトン・サボツキーが脚色、カメラマン出身のフレディ・フランシスが監督したホラー映画。撮影はジョン・ウィルコックス、音楽はエリザベス・ルティエンスが担当した。出演はクリストファー・リーとピーター・カッシングの恐怖映画コンビのほかに、パトリック・ワイマーク、ナイジェル・グリーンなど。製作は脚色者のミルトン・サボツキーと、マックス・J・ローゼンバーグ。テクニカラー・テクニスコープ。
メイトランド教授(P・カッシング)は博学で知られる学者だった。フィリップス卿(C・リー)とは永年の親友で、二人とも魔法、降霊術、妖怪学等に興味を抱き、珍品には金に糸目をつけず買いとった。ある晩、マルコ(P・ワイマーク)という人相の悪い男が、珍らしい書物をもって教授を訪ねてきた。夫人(J・ベネット)や召使は、男の姿が余りに無気味なので、それとなく教授に注意するのだが、教授はそれを遮って書斎に案内した。マルコのもってきた書物の表紙は、人間の女の皮からできていた。そして内容はサド侯爵の伝記だった。たちまちその書物に興味をひかれた教授は家族や周囲の人との交際をたってすっかり書斎にひきこもってしまった。翌晩マルコがしゃれこうべを持って再び現れた。しゃれこうべはサド侯爵のもので異様な光に輝き教授の目に強く焼きついた。それにしても一千ポンドという値段はあまりに高すぎた。教授はその旨をマルコに伝えると、マルコはいずれ教授自からしゃれこうべを求めにくるだろうといい捨てて帰っていった。その夜も教授はサドに、没頭し読みあさった。そしていつしか夢遊病者のごとく、マルコのアパートの入口に立っていた。さすがの教授も気味悪くなりフィリップ卿に相談した。卿は、しゃれこうべには不思議な魔力があって、持主の精神を骨抜きにしてしまう。それ故しゃれこうべを手に入れようなど考えぬ方がよいとさとした。卿の言葉にうなずいた教授だったが、翌日またマルコのアパートを訪れていた。そしてマルコの部屋で見たものは、マルコの無残な死体とあざ笑うしゃれこうべの姿だった。そして、教授はしゃれこうべを盗むと静かにマルコのアパートを離れた。そこにはもはや、温厚な教授の姿はなく血走った目、ひきつった顔、サド侯爵がすっかりのり移った姿があった。
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